株式会社 材信工務店
iPad&ASPの物件データベースで
情報資産をフル活用して営業支援
滋賀県長浜市の材信(ざいのぶ)工務店は、戸建住宅を中心に幅広い建築物を取り扱い、創業75年余の歴史を持つ総合建設会社です。同社は長年蓄積した情報資産の活用を目指し、ASPとiPadによる独自の住宅営業支援システム「住宅Photo Studio」を開発しました。その背景と狙いについて、同社の伊藤氏、桂田氏、大岡氏に伺いました。
蓄積した情報資産を広く活用するために
- 厳しい環境下、御社の営業戦略は?
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伊藤氏
当社ではさまざまな建築物を建てていますが、大半を占めるのは戸建住宅で、今後もこれに注力していく計画です。具体的な戦略としては、扱う住宅を3種に分け、お客様に合わせて効率的・効果的に提案しています。まず規格品は、ベースプラン集に基づき標準仕様やオプションを設定。構造面にも厳しい社内ルールを設け、価格はワンプライスで明確化しました。イージーオーダー品は、ベースプランを設けませんが、構造等の基本的なレギュレーションは規格品同様のルールを設定しています。そしてオーダーメイドは自由設計で、外部の建築家や社内の設計者が営業マンとタッグを組んで作っていきます。
- 営業戦略における狙いと課題は?
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伊藤氏
近年、お客様のニーズは、より自由性の高いものを求めるなど、高度化し多様化しています。私たちはこのニーズをオーダーメイドでなくイージーオーダーに取込むことで、より効率よく展開していきたいと考えています。そのためには、多様化するニーズに確実にお応えできるようイージーオーダーの幅を広げ、商品自体もさらに作り込んでいく必要があります。それにはまず長年蓄積してきた物件情報を共有化し、この情報資産を幅広く活用することが重要です。また、営業マンのスキルアップも欠かせませんね。
- どのようなスキルアップでしょうか?
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伊藤氏
まずヒアリングスキルです。お客様の要望レベルが高いほど、そのイメージを聞き取るのは難しくなります。これを上手く聞き出すには、自分の中にいろんな物件のイメージを取込んでおき、お客様の要望にそれを当てはめながら予算計画を立て、最適な落とし所へ持っていかなければなりません。実は、今回の「住宅Photo Studio」の開発もこうした事情が背景にありました。
過去事例を生かしてイメージを伝える
- 「住宅Photo Studio」開発の背景とは?
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伊藤氏
お客様への提案を行う時、当社ではお客様の要望に合った事例、つまり過去物件の写真を出力してプレゼンし、イメージをお伝えしています。しかし物件情報の統一的なデータベースがなく写真等の情報は各営業店でバラバラに管理され、何百もの事例から適切なものを探し出すのが難しい状態でした。各営業マンも年間80棟余の当社物件の全体像を把握しきれず、自分の担当物件ばかり発想のベースとするため提案の幅が狭くなっていました。そこで全社で共有できるデータベースを作り、施工事例という最大の経営資源を皆が使える環境にしたいと考えたのです。
- システムの概要をご紹介ください
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桂田氏
ASPを利用し、当社の施工事例の写真を保管管理する事例データベースです。社員なら誰でも各営業店を含む全社のどこからでもアクセスし、いつでも見られます。機能的には凝ったことはしていませんが、物件画像を呼びだすだけでなく部位別に検索できる検索機能があり、お客様の関心が高い10部位それぞれで事例写真を検索できます。たとえばリビングにこだわる方には、リビングの事例をピックアップして見せるということが可能です。社内では各自のパソコンで、またプレゼンルームや社外等、対お客様での利用ではiPad等からアクセスして使えます。
- 利用者は営業マンが中心ですか?
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伊藤氏
契約後の進行を担当するコーディネーターも活用します。たとえばお客様と仕様を決める時「この建材サンプルを使うとこうなります」と事例写真を見せながら決め込んでいくわけですが、それにはやはり何百もの事例写真から探しださなくてはなりません。それでも、お客様に「イメージが違う」といわれればまた社に戻って探し直しです。このシステムを使えばその場で「こんな感じですか?」とどんどん見せて素早く決め込めます。
- 対お客様でなぜiPadを?
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大岡氏
iPadなら持ち運びも楽だし、誰でも手軽に使えるという点が大きいですね。対お客様という点では、キーボードを使わずに対面式で使える所が重要で、これならお客様自身に触っていただけます。物件写真の画像も、iPadの画面いっぱいになるサイズで作っています。
「Z」のより幅広い活用が今後の課題
- 「住宅Photo Studio」の開発状況は?
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伊藤氏
ソフト会社の協力を得て2012年春から開発を始めました。アプリケーション自体は秋に完成し、現在はデータの登録作業を進めています。過去の事例データも膨大な量になりますが、ある程度セグメントしながら年内に数百棟分は入れて、年明けには実運用を始めたいですね。
- 今後の課題は?
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伊藤氏
プレゼン強化です。ARCHITREND Zを使っているのに、パースやウォークスルーなどのプレゼン機能があまり活用できていません。現状では営業マンがプランを入力し、それをコーディネーターが図面にしてお客様と打合せながら詰め、契約前に設計部がチェックする形ですが、設計部だけでは全社のパース制作にまで対応できないし、営業マンにやらせるのも無理があります。だからパース制作も任せられるコーディネーター育成が課題です。
- 営業も「Z」をお使いに?
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伊藤氏
以前は営業が手描きしたメモを元にコーディネーターが入力していましたが、現在は営業がプランを入れています。これにより商談提案の期間が飛躍的に短縮されるなど、大きな効果がありました。前述した耐震等級や柱と壁の直下率、グリッドルール等の設計ルールの運用も、ARCHITREND Zの機能を活用することで可能になっています。コーディネーターもそうですが「Z」をどれだけ使いこなすかが重要なポイントです。新製品の「ARCHITREND Z Ver.8」はプレゼン機能が強化されたそうなので期待しています。
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※2012年発行のWind/fで掲載したものです。役職などは、取材当時のものです。