一般社団法人 ZEH推進協議会
未来の子どもたちのため「いま出来ること」を!
ZEHの普及と先導で「三方良し」をめざす
ZEH推進協議会の新たな取り組み
2014年の「エネルギー基本計画」において、住宅に関して「2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」という政策目標が設定されました。さらに経済産業省による目標達成のためのZEHロードマップも提示され、ZEH普及を目指す取組みが着々と進められています。こうしたZEH政策の本格化を背景に、ZEHビルダー等事業者を支援しZEHの普及促進を図るための活動を行っているのが一般社団法人 ZEH推進協議会です。同協議会の代表理事を務める小山貴史氏に、ZEH普及の現状と今後の展望について伺います。
ZEHの普及と先導を目指すオールジャパン組織
- ZEH推進協議会(以下「ZEH協」)をご紹介ください
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小山氏
ZEH協は国のZEH施策を背景に、ZEHビルダーを支援しZEHの普及促進を目指すオールジャパンの組織です。一般会員の多くはZEHビルダーで、地方の大手ビルダーから中小工務店まで200数十社に上り、その年間供給棟数は合計1万棟近くなります。特徴的なのは賛助会員として福井コンピュータアーキーテクトをはじめ、電気機器メーカーや太陽光発電メーカー、サッシメーカー、断熱材メーカー等々、関連産業が約50数社も参加していること。中には関西電力や日産自動車等の異分野の大手企業もおり、産業としてのZEHの将来的な広がりへの期待の大きさが伺われます。
- ZEH協の活動内容をご紹介ください
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小山氏
私たちの活動内容はZEHの普及と先導という二つに分けられます。まず「ZEHの普及」は、言葉通りZEHに関する正しい知識を広く普及させようという活動です。たとえばこの5月に始まる新「ZEH補助金活用セミナー」は、新たにZEHに挑戦しようという会員向けの無料セミナー。環境省にも応援いだたき全国5ケ所で開催予定です。また、ZEHの普及に取組もうというZEH協会員に対しては、役立つ情報やノウハウを多角的に提供しています。もちろん民間の立場でZEHに関わる多様な情報発信を行い、普及啓発を進めることも重要なミッションです。
- もう一方の「ZEHの先導」とは?
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小山氏
ZEHを超えるZEH+(※1)や、さらにその先を行くLCCM住宅
(※2)など、より高レベルの住宅づくりに挑戦したい方々も支援しています。たとえば国が進める事業の補助金制度などにZEH協として応募するなど行っています。実際、LCCMについては2018年度から国交省による補助金制度が始まりましたが、実はZEH協では2017年にサステナブル建築物等先導事業の公募に応募。「地域ビルダーLCCM住宅先導プロジェクト」で採択を受け、LCCM住宅200棟を対象に1棟180万円の補助金を受け、会員と共にこの先進的住宅づくりを進めています。
※1 ZEH+:外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備で一次エネルギーの消費量を20%削減するZEHに対し、ZEH+はより高度な省エネ性能の実現により25%の削減を可能にする
※2 LCCM(Life Cycle Carbon Minus)住宅:ZEH要件に加えて「新築・改修・解体」に関わる一次消費エネルギー量も太陽光発電の創エネでまかなう高性能住宅
ZEH実現は未来の子どもたちの要請
- 現状、ZEHの普及状況はいかがですか?
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小山氏
エネルギー基本計画では2020年にZEH標準化を、2030年には新築平均でZEH化を決定しています。つまり、2020年には新築戸建注文住宅の過半数をZEH化し、2030年には建売住宅や集合住宅まで含めた平均ZEH化が定量目標となっています。これに対し、2017年度のZEH普及率は登録ZEHビルダー(約7千社)の新築戸建住宅の約20%。もちろん未登録ビルダーもいますが、登録者だけで日本の戸建注文住宅供給の約75%を占めており、この約20%という数字に大きなズレはないでしょう。個人的には2018年度は25%程度と見ており、2020年50%の目標達成には業界も国もさらなる工夫と努力が必要です。
- ZEH普及はそれほど重要なのですか?
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小山氏
パリ協定に端を発する地球温暖化の問題や脱炭素の問題、そして原発問題に関連するエネルギー問題等を考え合わせると、エネルギー基本計画の背景には「全電力需要の約2割を占める家庭の電力需要は、住宅側で対策すべき」という考えがあります。私たちが建てている住宅は2050年になっても住み続けられますし、パリ協定の国際合意では、日本も2050年頃には既築も含め概ねZEHにするしかないような目標が検討されています。つまり、いま対応しなければ間に合わないのです。ZEHはいわば「未来の子どもたち」からの切実な要請なんですね。
- 普及を遅らせている要因は?
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小山氏
太陽光発電への理解不足が大きいと考えています。外皮性能向上に取組む先進的ビルダーも、太陽光発電には積極的でない場合が多々あります。もちろんパッシブ設計のようなコンセプトはZEHでも重要な考え方ですし、必要な取組みです。しかし、それで省エネできるのは主に冷暖房部分で、一般家庭全エネルギー需要の3割前後。残る7割は給湯や照明、家電など他の電力需要が占めているわけで。ZEH実現には、外皮性能の向上だけでなく、太陽光発電で家庭の電力をプラマイゼロもしくは他に提供できる程度にする必要があるのです。
ZEHの普及で「三方良し」
- 太陽光発電への理解不足とは?
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小山氏
太陽光発電に150〜200万もかけると躯体に資金が回らなくなる、という方がいますが、これは大きな誤解です。実は家づくりのコストにおいて太陽光発電はあくまで別腹。それだけローンが借りられないなら初期費用が実質0円のモデルもあるし、上乗せして借りてでも付けた方が得になるのです。実際、ローン返済の増加分と光熱費の節電分に売電分の収支を合計してみれば答えは明らかです。しかし、こうした考え方の多くは電気に関する内容で建築士の職能から外れるため、関心を示す方は少数派。だからパッシブ設計で高性能な躯体を作っても、太陽光にはそっぽを向いてZEHまで行き着けず、結果、施主に損をさせてしまいかねません。
- 「施主に損をさせる」とは?
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小山氏
前述の通り、施主は家庭電力需要の7割を占める給湯や照明、家電等の電気代を延々と払い続け、その額は20〜30年で合計でおよそ200〜300万円ほどになります。また、実はそれを建てたビルダーも損をしているんですよ。太陽光発電は別腹ですから、採用すれば単純にそのぶん契約金も増えるわけで……。つまり、ZEHを実現すればお客様も得するしビルダーも得をする、さらに未来の子どもたちもハッピーになれるのですから、まさに「三方良し」。実際、このことをきちんとお伝えできれば、ZEHを嫌がる方はまずいません。私が経営するエコワークスでも、建てた住宅でのZEH率は2018年度で94%に達しました。
- ZEH普及に関する今後の展望は?
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小山氏
すでに国は「2030年に平均ZEH化を」と提唱しており、今後はあまねくZEHにしようという施策が進められます。住宅業界のほぼ全ての事業主が、ZEHを避けて通れないようになると考えるべきでしょう。もちろん義務化ではないので「絶対やらない」という事業主がいても良いわけですが、今後は「ZEHをした方が得になる」方向で社会の制度設計が検討されていくわけで……。「これから」の方も含めて、ZEH協は今後さらに積極的な支援を展開していきます。その意味では、ARCHITREND ZEROなどのCADソフトにも、ZEH判定やLCCM住宅判定など、より高度なZEHサポート機能を期待したいですね。
※取材:2019年4月
新築住宅を建築・購入等する個人が対象の主な補助事業
本年度環境省「ZEH補助金」では新しく「新規取組ビルダー/プランナー向け」の公募が設けられます。支援制度をうまく活用し、ZEHに取り組みましょう。
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