建築積算士資格の概要や仕事内容
まずは建築積算士の概要や建築業界における重要性や役割、仕事内容などについて解説します。
建築積算士とは
建築積算士とは、建築・建設業界における積算業務に関して、専門性の高い知識や基礎的な技術を有する専門家として認定された資格です。2001年3月31日までは「建築積算士資格者」の名称にて国土交通省の大臣が認定する国家資格でしたが、同年の4月1日より「建築積算士」の名称に変更され、公益社団法人日本建築積算協会が認定する民間資格となりました。民間資格ではあるものの国家資格時と同様の有効性があり、取得することで建築積算のプロとしての評価を得られる資格です。
建築積算士の重要性
建築業界における積算作成業務そのものには、特定の資格は不要です。ただし、建築業界では建物の工法や使用する材料、工事の規模や後期などによって案件毎に価格が変動しやすいという特徴があります。積算では案件ごとに異なってくる設計図や仕様書から必要な材料の種類や数量、人件費などを正確に読み取り、適正な建設工事費用を算出しなければいけません。積算で正しい価格が算出されないと、例えば経費を差し引いた結果赤字になる、利益が出ない、発注者などのクライアント側とのトラブルになるといった諸問題が発生する可能性があります。さらに、ゼネコンをはじめとした総合建設工事を行う企業の積算は工事一式である一方、電気や建具といった専門工事を担う企業の場合、積算担当者は正確な費用を算出するために、工事で使用する専門的な材料や、工事を担う職種を踏まえた専門的な積算方法を身につける必要があります。そのためには、建築積算士の資格取得がおすすめです。建築積算士の資格を所持していることで、積算の専門家として活躍できます。建築工事のプロセスでは必須の業務となり、顧客へ正確な見積もりを提示する上でも、建築積算士は重要な役割を担っていると言えるでしょう。
建築積算士の仕事内容
建築積算士の仕事は、以下の3つに大きく分けられます。
・総工事費の算出
・工事費の最終決定
・価格交渉
工事に必要となる材料や人件費、経費などを設計図や仕様書を元に算出するのが「積算」と呼ばれる業務です。積算を正確に行うことで、利益を見込んだ工事原価を算出できます。顧客へ提示する見積書作成の元にもなる、重要な業務です。積算で算出された工事原価を元に、利益を踏まえた最終的な工事価格を決定します。予算と原価のバランスを踏まえて建築積算士が金額を設定することで、確実な利益を生み出せます。また、建築積算士は材料の取引を行う業者や、設備工事の請負業者との直接価格交渉を行うこともあります。建築工事のコストを下げるためには単価を抑えつつも、工事そのものの品質や納期は厳守しなければいけません。そのためには材料や工事に関する専門的な知識に基づきながら、先方と価格調整を行うためのコミュニケーションをする能力が求められます。品質や納期は担保しつつ価格を抑えた工事を実現し、利益も生み出せる建築積算士がいれば、企業は価格競争面で競合他社よりも優位に立てます。建築積算士は、経営上でも大きな存在となるでしょう。
積算作成に資格は必要? 建築積算士資格を取得するメリット
建築積算士を取得することで、個人的にもさまざまなメリットを得られます。建築積算士資格がもたらすさまざまなメリットを紹介します。
建築業界の事務系職種へ就職・転職できる
建築積算士はおもに積算業務や価格調整を担うため、建築業界において現場の作業員(ブルーカラー)ではなく、事務系(ホワイトカラー)を担う職種です。建築業界で働きたいものの現場作業そのものを希望しない人や、電気工事士や建築士などの資格を持っていない人、事務方として活躍したい人にとっては大きなメリットのある資格です。
民間企業だけでなく官公庁も勤務先として視野に入る
建築積算士は元々国土交通省の認定する国家資格であった側面から、民間企業だけでなく官公庁での勤務も選択肢となる資格です。入札システム確認や工事価格の適正化などの業務に携わる道も拓けるでしょう。
将来的な起業も目指せる
建築積算士を取得することで将来、建設・建築関連事業での起業や独立を目指したいときにも有利となる可能性があります。正しい積算をすることで利益を確実に出したり、顧客との取引や交渉を効率化したりできるためです。
キャリアアップ・収入アップにつながる可能性がある
建築積算士をはじめとした資格を取得することで、希望部署への異動や昇進が実現できる可能性があります。また、資格手当を設けている企業なら、年収アップにもつながるでしょう。
建築業界での就職に有利となる
建築積算士資格を取得することで、以下のような評価や対応が受けられます。
・国土交通省「測量・建設コンサルタント等業務競争参加資格審査」の有資格者数の審査対象として2点が付与
・公共建築設計者情報システム(PUBDIS)における技術者情報の指定対象
・沖縄県での建設工事入札参加資格審査および測量及び建設コンサルタント等業務入札参加資格審査において、主観項目(技術者)で2点の加点評価
・独立行政法人や地方自治体のプロポーザル等でも同様の点数付与や、技術者の資格記載が求められることがある
・(一社)日本損害保険協会認定の損害保険登録鑑定人に合格し、建築積算士を取得していれば「専門鑑定人A」として登録可能
建築積算士資格所有者が在籍していることで、建築業企業にとっても有利となる点が多くあります。すなわち建築積算士の需要は高いことから、建築業界での転職にも役立つでしょう。
建築積算士資格の取得方法や試験内容
公益社団法人日本建築積算協会の公式サイトより、2026年2月時点での建築積算士の受験資格や会場、試験内容などの最新情報を解説します。
受験資格
満17歳以上であれば、社会人としての経歴や建築業の経験、学歴などの条件を問わず誰でも受験可能です。現在学生の人でも受験できます。なお、以下に該当する人は一次試験が免除となり二次試験に合格すれば資格取得となります。
・公益社団法人日本建築積算協会が認定する建築コスト管理士、建築積算士補資格所持
・建築士法による一級建築士、二級建築士及び木造建築士資格所持
・建設業法による一級及び二級建築施工管理技士資格所持
・公益社団法人日本建築積算協会が実施する積算学校卒業生
・過去の一次試験合格者
試験日程
試験は毎年度1回以上、一次試験は10月頃、二次試験は1月頃に行われています。具体的な日時は受験する年度により異なるため、忘れずに確認しましょう。例として、2025年の建築積算士試験の日時を以下に記載しました。
・受験申込期間:2025年6月2日(月)から9月1日(月)まで
・一次試験日時:2025年10月26日(日)12:50~15:50 (3 時間)
・合格発表:2025 年12月1日(月)10時頃
・二次試験申込受付期間:2025年10月1日(水)〜12月5日(金)まで
・二次試験日時:2026年1月25日(日)10:00~17:00
・合格発表:2026年3月2日(月)10時頃
・資格登録手続き:3月13日(金)まで
受験手数料
建築積算士は日本全国の各会場で開催されます。2025年度は、以下の地域に試験会場が設けられました。
・札幌・仙台・東京・名古屋・金沢・大阪・岡山・広島・福岡・鹿児島・沖縄
同じ都市で一次試験・二次試験会場が異なる場合もあるため注意しましょう。
申込方法
建築積算士試験の申込方法はインターネット申し込みのみです。公益社団法人日本建築積算協会の公式サイト内にある申し込みフォームより必要事項を入力・送信し、申し込みします。その後試験の案内がメールまたは郵送で来たら、受験手数料を支払いましょう。申し込み事項と支払いが確認されたら、試験日の2週間前までに受験票が発送されます。
試験内容
建築積算士試験は、一次試験と二次試験からなります。以下に試験内容を一覧としてまとめました。
|
試験の種類 |
試験の内容 |
試験範囲 |
時間 |
|
一次試験 |
4肢択一 50問 |
新☆建築積算士ガイドブック全章(ガイドブックに記載の令和 5年版建築数量積算基準・建築工事内訳書、標準標識) |
3時間 |
|
二次試験 |
短文記述試験 2問 問題に対する解答を短文(200 字以内)で記述 |
新☆建築積算士ガイドブックのうち第1章~第5章、第8章~第17章 |
1時間 |
|
実技試験 躯体(コンクリート、型枠、鉄筋)、鉄骨、仕上の内訳明細作成・工事費算出 図面に基づき、数量を計測・計算、内訳明細の作成 |
新☆建築積算士ガイドブックのうち第5章~第8章、巻末の基準類(ガイドブックに記載の令和5年版建築数量積算基準・内訳書標準書式) |
4時間30分 |
合格後の手続き
建築積算士試験に合格後は、資格登録手続きが必要です。合格発表後に合格者へは合格通知書とともに登録関連書類が郵送されます。登録関連書類に必要事項を記入し、所定の日時(2025年度は3月13日)までに登録申請を完了させましょう。なお登録手数料として13,200 円(消費税込)が別途必要です。
建築積算士資格の難易度や合格率
公益社団法人日本建築積算協会の公式サイトを参考に、最新版(2025年度)の建築積算士試験の合格者数から算出した合格率や難易度、さらに試験対策方法を解説します。
一次試験・二次試験の合格率から見る難易度
2025年度の建築積算士試験の合格率は以下の通りです。
・一次試験:62.2%(実受験者数435名、合格者数:271名)
・二次試験:59.5%(実受験者数967名、合格者数:576名)
例年合格率は50〜60%で推移しているため、十分な試験対策を行えば決して難易度は高いとは言えません。ただし試験範囲が広いため、計画的に勉強を進める必要があります。
建築積算士試験で求められる知識
建築積算士試験で求められる知識の例として、以下のものがあります。
・生産プロセス:建設産業の特徴や、変遷・現状などへの理解、建築生産プロセス、マネジメント、コストマネジメント
・工事発注スキーム:入札の種類、発注方式、契約方式、数量公開、発注単位
・設計図書構成:設計図書構成と種類、優先順位
・工事費構成:直接工事費と共通費の構成、主要建物用途の種目別工事費構成比率
積算業務内容:積算業務の流れ、積算実務(仮設、土工、躯体、仕上、屋外施設を含む設備、改修)、概算手法、値入業務
・ 数量積算基準:基準及び同解説の理解
・標準内訳書式:基準及び同解説の理解
・主要な市場価格:市場価格、コスト情報の入手方法
・データ分析と積算チェック:データ整理、歩掛、分析方法、積算チェック
・ 施工技術概要:標準的な施工法、建築施工プロセス、特殊工法(省力化、工業化や工期短縮等)概要
・LCC・VE概要:LCC(ライフサイクルコスト)、VE(バリューエンジニアリング)の概要
・木造建築概算
・ BIM(Building Information Modeling)概要
・改修工事・解体工事概要
・環境配慮概要:環境配慮とコスト概要
試験対策方法
建築積算士試験は、「新☆建築積算士ガイドブック」より出題されます。このガイドブックは、公益社団法人日本建築積算協会の公式サイトやAmazonから購入可能です。「新☆建築積算士ガイドブック」の内容をただ覚えるだけでなく、過去問を利用して演習を繰り返すことで知識を定着できます。過去問や解答、解説も公益社団法人日本建築積算協会にて公開されていますので、試験対策に活用しましょう。
建築積算士の年収や具体的な就職・転職先
建築積算士は未経験からでも挑戦できる資格試験であり職種でもありますが、収入面や携える分野などに疑問点のある方もいるかも知れません。建築積算士の平均的な年収や、具体的な就職・転職先の業種について解説します。
建築積算士の年収
マイナビ転職の「2025年版職種別モデル年収平均ランキング」によると、建築積算士の平均年収は、559万円です。国税庁の「令和6年分民間給与実態統計調査」では、日本の給与所得者の平均給与は478万円のため、建築積算士の年収は平均よりも高めであることが分かります。
建築積算士資格の保有によって選べる就職・転職先
建築積算士資格を所持していると、以下のような業種やキャリアが選択肢となります。
・建設会社
・設計事務所
・積算会社
建設会社には、ゼネコンと呼ばれる総合建築業者、ゼネコンから工事の発注を受けるサブコン、都市開発や新築マンション建設を担うデベロッパーなどの業種があります。さらにゼネコンの中でも企業の規模によりスーパーゼネコンや大手ゼネコン、中堅ゼネコンなどが存在しています。設計事務所では、建築工事の設計やデザインの考案、図面の作成などを業務としています。建築積算士は、工事が適切に行われているかを確認する管理業務などを担います。積算会社は、概算見積もりや設計時の積算などの依頼を建設業者から受ける会社です。特に大手企業との取引が多い積算会社へ就職することで、高収入も狙えるでしょう。依頼が多いことで、積算の経験を多く積めるためスキルアップも目指せます。
建築積算士のほかに取得しておくと有利な関連資格やスキル
積算業務に携わりながらキャリアアップを目指したい人のために、建築積算士以外で取得しておきたい資格やスキルについて解説します。
建築コスト管理士を取得する
建築コスト管理士とは、建築のライフサイクル全般にわたるコストマネジメントを担当できる、高度な知識や技術を有する技術者として認められる資格です。建築積算士に求められる知識に加えて、以下の知識が求められます。
・コスト情報収集、分析
・広範囲な市場価格
・発注戦略
・調達戦略
・フィジビリティースダディー
・積算技法
・施工技術・工期算定
・LCC / VEおよびFM / PM / CM概要
・環境配慮
・建築関連法規
・IT活用
受験するには建築積算士資格取得後に1回以上の更新を行う必要があり、建築積算士の上位資格とも言えます。建築コスト管理士を取得することで、コスト管理の範囲にも業務を広げることができ、より積算分野での収入やキャリアアップが望めるでしょう。
建築工事に関する専門知識を常に勉強する
積算では、品質、コスト、納期などのバランスを考えて材料や工法の選定が求められます。原価を抑えつつも品質を担保したり、人件費などほかの経費に影響が出ないようにしたりするためにも、積算には建築工事に関する幅広い知識が必要です。建築積算士資格取得後も、積極的に建築工事に関する専門知識を勉強し、新しい情報や技術に関する知識を収集していくことが求められます。
計算力を磨く
積算業務は、材料、工事の規模、人員などを把握して数量を計算する必要があります。正確かつ慎重に工事費を算出するためにも、つねに計算力を磨く姿勢を持つことが重要です。
コミュニケーション能力を身につける
積算担当者は、発注者や材料の仕入先など、建設工事に関連する幅広い関係者と調整や確認をしながら業務を進める必要があります。コミュニケーション能力が高い人なら、疑問点をすぐに関係者へ聞いたり、価格交渉を上手に進めたりといったことが可能です。
専門ソフトの使用方法を学んでおく
近年は積算をエクセルなどで行うのではなく専用のソフトを活用する企業も多くなってきたため、未経験からでも積算業務へチャレンジしやすくなりました。あらかじめ専門のソフトの使い方や操作方法の知識を身につけておくことで、より正確かつ効率的に積算業務を進められるようになるでしょう。たとえば福井コンピュータアーキテクトの3D建築CADシステム「ARCHITREND ZERO」では、意匠データからボタン1つで各数量を算出でき、集計結果については工事別・部屋別といったように目的別に確認できる積算機能を搭載しています。無料で操作方法を学べる、ARCHITREND ZEROの初級講座も随時開催しています。
建築積算士資格は転職や年収アップ、キャリアアップにも有効
建築積算士資格の概要や取得メリット、取得後のキャリアや平均年収について解説しました。建築積算士資格を取得することで、より積算業務の専門性を高められるだけでなく、年収やキャリアアップなどにも有効です。資格の取得とともに専門的な知識の勉強や計算力を磨く、専門ソフトの操作を身につけておくなどの取り組みで、積算士としてより正確かつ効率的に業務を進められるようになるでしょう。
本記事に関する製品
ARCHITREND ONE の導入事例


