リフォームで図面が必要・不要なケース

リフォームにおける図面の必要性は、工事の規模や内容によって異なります。ここでは、図面が必要になるケースと、不要になるケースを見ていきましょう。
間取りの変更をともなうリフォームは図面が必要
間取りの変更をともなう大掛かりなリフォームは、基本的に図面が必要です。たとえば、既存の壁を壊したり、あるいは新たに壁を作ったりする場合、建物の現況を正確に把握しなくてはいけません。建物を支える構造体や配管設備を理解せずに工事すれば、耐力壁などの重要な部分を壊してしまうリスクがあります。
なお、施主が現況の図面を持っていない場合、施工会社が現地調査によって新たに図面(現況図)を作成する流れが一般的です。現況図をもとにリフォーム用の図面を作り、工事全体を管理します。
簡易的なリフォームは図面が不要
簡易的なリフォームであれば、図面が不要になるケースがほとんどです。具体的には、外壁塗装や屋根の防水改修、室内のクロスや床材の張り替えといったシンプルな工事が当てはまります。
こうしたリフォームは建物の構造を変更しないうえ、配管が通る壁を壊す必要もありません。そのため、施工会社による現地確認を行えば、現況を図面に起こさなくとも安全にリフォームを進められます。
ただし、精密な施工面積によって所要数量を見積りたい場合は、図面が必要になる可能性があります。
リフォームにおける図面の必要性

大掛かりなリフォームの際は、建物の現況を起こした図面が求められます。具体的な3つの理由を説明します。
綿密なプランニングができる
図面があれば、正確な現況をもとにリフォームの計画を立てられます。リフォームは施主の要望を必ずしもすべて叶えられるわけではなく、建物の構造や設備による制約を受けます。
現況がわかる図面を用意することで、施主の要望のうち「実現できるもの」と「実現できないもの」のすばやい判断が可能です。リフォームの計画を早い段階で決定できれば、設計から施工完了までスムーズに進めやすくなるでしょう。
瑕疵担保責任の範囲を明確にできる
リフォームの際に現況図があれば、工事前に瑕疵担保責任の範囲を明確にできます。瑕疵担保責任とは、施工後に契約内容と異なる点が発生した場合、工事の事業者が一定期間責任を負うルールです。
たとえば、リフォーム後の住宅に問題点が見つかった際は、リフォームによって生じた欠陥なのかを判断する必要があります。事前に責任の範囲を確認することで、施主とのトラブル防止が可能です。なお、2020年4月1日の民法改正により、厳密には「契約不適合責任」へ名称が変更されています。
施行ミスを防げる
リフォームは既存の建物に手を加えるため、構造を充分に理解していなければ施工段階で思わぬミスが起きるかもしれません。
図面には梁や柱、耐力壁の配置のほか、電気配線および給水管のルートも記載されています。建物の重要なポイントを事前に把握できることから、工事の際に思わぬ損傷を生じさせる心配がありません。想定外の施工ミスを防止し、修復にともなう余計な工事を避けられます。
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リフォームに使用する図面の種類

リフォームに使用する図面はさまざまな種類があります。工事内容によって必要な情報は違うため、すべての図面が必須になるわけではありません。ここでは、代表的な図面の種類を紹介します。
平面図
平面図とは、建物を真上から俯瞰した状態で描く図面です。各フロアごとに作成され、壁や柱、窓、ドア、家具などの配置を示します。間取りの変更を行うリフォームの場合は、不可欠な資料です。また、空間の動線設計にも役立ちます。たとえば、リビングと和室を一体化するリフォームでは、壁を撤去した後の家具配置や生活動線を平面図で確認できます。空間の使いやすさを事前に検証することで、現実的なリフォームが可能です。
展開図
展開図とは、室内の中心から見た東西南北の4面を切り取った図面です。部屋ごとに作成して、高さを確認するために用いられます。窓やドアの位置、高さの寸法、照明や棚板の位置、壁の仕上げといったポイントが明確になり、とりわけ内装工事において重要な図面です。天井、壁、床の仕様を展開図で細かく確認することで、部分的なリフォームでも打ち合わせがスムーズになります。
立面図
立面図とは、建物の外観を東西南北の4面から見た図面です。外壁の高さや仕上げ、屋根の形状や勾配、窓やドアなどの開口部の配置など、外観を全体的に確認する際に役立ちます。外壁や屋根の改修、断熱リフォームといった工事で必要になるでしょう。リフォームによる外観の仕上がりを確認しやすいため、施主との打ち合わせでも活用できます。
断面図
断面図とは、建物を垂直に切った断面を描いた図面です。天井や屋根、床、梁の構造に加えて、屋根の勾配、軒や庇の作り、天井高、床高、階段の寸法、配管といった建物の構造を把握できます。各階の関係や高さを理解できるうえ、建築基準法の規定に沿っているかのチェックも可能です。主に、骨組みだけ残した状態から建物を造り直す「スケルトンリフォーム」や、耐震補強などの工事で必要になります。
設備図
設備図とは、給排水管、電気配線、ガス管、空調ダクト、光回線・電気回線などの設備系統を平面上に整理した図面です。また、電気や電話の系統をまとめた「電気配線図」と、給排水とガスの系統をまとめた「給排水設備配管図」と設備の種類に応じて分ける場合もあります。キッチン・浴室・トイレの移設、照明の位置変更といった設備に手を加えるリフォームでは、設備図があるとスムーズに計画を立てられます。
仕上表
仕上表とは、各部屋の天井や壁、床の情報をまとめた一覧表です。各部位の材質や仕上げ材の品番が整理されており、現況の把握に加えて建物にかかっている荷重計算も行えます。多くの場合、仕上げ表のみ使用するのではなく、平面図や展開図といった他の図面と合わせて建物の構造を確認します。
建具表
建具表とは、建物に使われている建具の詳細を記載した図面です。ドアや障子、窓、サッシについて、材質、寸法、仕上げ、ガラスの有無と仕様、開閉方向、設置箇所がまとめられています。例として和室の襖を洋風の引き戸に変更する際、建具表で寸法や素材、金物を確認すれば、他の建具との統一感を保ちやすくなります。
竣工図
竣工図とは、工事中に発生した変更点も含めた完成状態の図面です。図面はあくまで予定であるため、実際に施工する中で変更が生じるケースは珍しくありません。竣工図を確認することで、建物が完成した時点の状態を正確に確認できます。新築工事の際に作られた平面図や立面図ほど詳しくないものの、現況の把握に役立てられます。
リフォームに必要な現況図面がない場合の入手方法

リフォームの施主が、必要な現況図面を持っていないケースはよくあります。中でも、築古住宅や中古物件では、前所有者から図面を引き継いでいないパターンが少なくありません。リフォームに必要な現況図面がない場合、以下3つの方法で入手しましょう。
不動産会社や建築会社から入手する
住宅の建築に関わった不動産会社や建築会社によっては、図面を保管している会社が存在します。建売住宅や中古住宅の購入を仲介した不動産会社であれば、建物の売買契約の際に交わした図面を所有している場合があります。
また、新築時のハウスメーカーや工務店は、新築時に使用した詳しい図面を残しているかもしれません。
こうした関係者に問い合わせることで、必要な図面を入手できる可能性があります。
公的機関から取得する
リフォームに用いる図面は、役所や法務局から取得するパターンもあります。たとえば、市や区の役所は、新築時の「建築確認申請書」を保管しています。15年の保管期限を過ぎていなければ、確認申請書にある図面の確認が可能です。
一方、法務局からは、登記してある建物の「建築図面」と「各階平面図」を取得できます。リフォームの現況図として情報が不足している場合もありますが、建物の基本的な構成の把握に役立ちます。
現地調査で図面を作成する
図面の有無にかかわらず、リフォームの際に現地調査は必ず行われます。既存の図面がどこからも入手できない場合、現地調査の際に新たな図面の作成が必要です。
リフォーム会社が現地調査を行って、現況を図面に起こします。壁や柱、梁、開口部などの寸法・位置を採寸し、大まかな図面を作ります。また、配管・配線経路も可能な範囲で確認することで、リフォーム前に現況をある程度把握できるでしょう。
なお、図面の作成は設計事務所に依頼する場合もあります。
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リフォーム内容によっては「検査済証」が必要となる

現況の図面に加えて、リフォーム内容によっては「検査済証」を求められます。中でも、大規模な修繕や増築をともなうリフォームでは、法的な手続きを適切に踏んでいなければ工事許可が下りない可能性があるために注意が必要です。ここでは、リフォームにおける検査済証について順を追って説明します。
検査済証とは
そもそも検査済証とは、対象の建物が建築基準法に代表される関連規定を守っていると証明する書類です。検査済証は、建物の竣工後に行われる「完了検査」をクリアすると発行されます。また、完了検査を受けるためには、着工前に行う「建築確認」を行わなくてはいけません。建築確認を通過すると「確認済証」が発行されます。検査済証を取得する流れをまとめると、以下のようになります。
1.着工前:建築確認の実施
2.着工前:建築確認を通過して「確認済証」を取得
3.竣工後:完了検査の実施
4.竣工後:完了検査を通過して「検査済証」を取得
通常、上記の流れで発行された検査済証は施主が保管しています。「木造二階建て」または「延べ面積200㎡以上の木造平屋建て」でリフォームを行う場合、工事内容によって検査済証が必要になります。
大規模な修繕や模様替えは検査済証が必要な場合あり
「木造二階建て」または「延べ面積200㎡以上の木造平屋建て」の建物は、建築基準法が定める「新2号建築物」に当てはまります。新2号建築物の大規模な修繕や模様替えを行う際は、建築確認申請が必要です。市区町村の役所、もしくは民間の指定確認検査機関に申請して、検査済証を提出します。
なお、従来は「4号特例」と言って、「4号建築物」に該当する一般的な木造住宅は申請が不要でした。しかし、2025年4月からの建築基準法改正により、4号建築物の枠組みが撤廃されています。これまでの4号建築物は「新2号建築物」と「新3号建築物」に振り分けられ、新2号建築物の大規模なリフォームは建築確認申請が必要となりました。
増築は原則としては検査済証が必要
新2号建築物の増築を行う場合も、原則として検査済証が必須となります。大規模な修繕や模様替えと同様に、市区町村の役所または指定確認検査機関に建築確認申請を行いましょう。その際に、検査済書を提出する必要があります。
検査済証がない場合の対処法
2025年4月からの建築基準法改正により、一般的な木造住宅の大規模リフォームは検査済証が必要となりました。ところが、再発行できない検査済証を紛失している場合もあるでしょう。古い建物であれば、本来受けるべき完了検査を行わず、検査済証が発行されていないケースも考えられます。
検査済証がない場合、まずは「既存建築物の現況調査ガイドライン」に沿った調査を受けましょう。現行の建築基準法への適合状況を調べ、不適合となった箇所があれば改修して適合させます。ただし、一定の範囲内のリフォームであれば「既存建築物の緩和措置」が適用され、不適合のままでも工事を行えます。既存建築物の現況調査は、建築士や指定確認検査機関に依頼することで実施可能です。
リフォーム用の図面の作成方法

リフォーム用の図面は、現況図や現地調査、施主の要望をもとに作成します。よくある制作過程を紹介します。
測量して現況図を作る
既存の建物の図面がない場合、測量して現況図を作る必要があります。手作業で採寸したデータを手書きで起こす方法もありますが、近年ではCADに入力して正確な現況図を作成する手法が一般的です。また、施主が現況図を所有していても、現況調査による確認作業は必須になります。
昨今では、現況調査を効率化するため、専用アプリを活用する流れが広がっています。たとえば、iPhone・iPad対応の無料の現況調査アプリ「りのべっち」は、現場の調査データを入力することで簡単に図面化が可能です。また、端末カメラで部屋線を3Dスキャン(LiDAR機能)すれば、現況図と3Dモデルが自動生成されます。
●現況調査アプリ「りのべっち」
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施主の要望をもとにリフォーム内容を提案する
現況図の整理後は、施主の要望をヒアリングして、具体的なリフォーム計画を固めます。間取りの変更やデザインなど、施主の希望を現況図に反映して図面を組み立てていきます。3Dシミュレーションアプリ「ARCHITRENDリフォームパレット」を活用すると、実際の建物の写真をもとにしたリフォーム計画の提案が可能です。撮影した現況写真から擬似3D空間を作り、壁材や床材、外装仕上げ、建材配置を柔軟に変更できます。施主は完成後のイメージを画像で確認できるため、打ち合わせや意思決定がスムーズになります。
●3Dシミュレーションアプリ「ARCHITRENDリフォームパレット」
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リフォーム用の図面を作る
現況図と施主の要望を踏まえ、工事に用いるリフォーム用の図案を完成させます。プランニング段階の簡易的な図面を詳細化して、施工者が読み取れる図面へ仕上げます。リフォームの内容に応じて、平面図や展開図、立面図を作りましょう。建築用CADを使うことで図面作成、設計変更の反映、数量算出を効率化できます。
リフォームの図面は「ARCHITREND ZERO」で簡単作成!

リフォームの図面作成には、3D建築CADシステム「ARCHITREND ZERO」がおすすめです。本製品の具体的な特徴を紹介します。
間取りを入力して3Dデータを作成
ARCHITREND ZEROは、間取りや屋根などの基本データから瞬時に3Dモデルを作成し、各種図面や書類・建築CGパースなどを一気通貫で作成する建築CADソフトです。3Dモデルや図面の作成、構造設計、顧客へのプレゼン、高度な積算見積もり、実建材データとの連携など、建築に必要な機能を網羅したオールインワンシステムです。リフォームにも活用できるため、現況調査からプレゼン、図面作成、進捗管理まで一貫して対応できます。
3Dデータから平面図を自動生成
ARCHITREND ZEROは間取りから自動で3Dデータが作成され、平面図も連動して生成されます。壁や柱、寸法、面積が反映されるため、1つひとつ手作業で入力する手間がかかりません。また、立体的な3Dビジュアルを画面で確認しながら、同時に平面図もチェックできます。現実的な動線であるかを一目で把握できて、変更点はすぐに調整できます。さらに、平面図からは立面図が自動で描画されます。
施主に合わせた多彩なプレゼンが可能
ARCHITREND ZEROには、多彩なプレゼン機能が搭載されています。たとえば、フォトリアルなCGパース機能を使えば、建物だけでなく家具も配置したうえで、光源の位置や明るさまで写実的に表現できます。他にも、手書き風レタッチの図面、現地写真に3Dモデルを配置するフォトモンタージュ、建物の断面パースなど、施主に応じた訴求力の高いデザインを制作可能です。
最先端の構造設計に対応
ARCHITREND ZEROは最先端の構造設計にも対応しています。木造、2×4(ツーバイフォー工法)、S造(鉄骨造)、RC造(鉄筋コンクリート造)といった幅広い工法の構造設計が可能です。在来木造については、「木造建築物電算プログラム」の認定を取得しているため、構造計算プログラムの信頼性に強みがあります。また、数値解析プログラム「wallstat」と連携しており、大地震の地震波をもとに建物データの損傷や倒壊をシミュレーションできます。
リフォーム・リノベーションにも対応
新築だけでなく、リフォームやリノベーションにもARCHITREND ZEROを活用できます。現地調査アプリ「りのべっち」の現況図を連携して計画図の作成、パースの作成、耐震診断、一括の作業指示、積算見積までシームレスに実行可能です。現況とリフォーム後のパース比較もできるため、ビフォー・アフターを一目で確認できます。施主へわかりやすくプレゼンできるため、すばやくリフォーム計画を立てられるでしょう。
高精度な積算見積もり
ARCHITREND ZEROは、積算見積もりにも対応しています。案件の利益率は積算情報からすばやく確認できるうえ、部屋別や工事別に数値をチェックできます。工事項目や拾い出し項目は過去の見積もりから再利用され、工事のたび何度も同じ作業を繰り返す必要がありません。さらに、ADの図面から数量および仕様を自動集計するため、見積もり業務の無駄を徹底的になくせます。
●ARCHITREND ZERO リフォーム・リノベーション機能
https://archi.fukuicompu.co.jp/products/architrendzero/renovation.html
リフォームは図面を用意してミスやトラブルを防止しよう
リフォームの図面は、クロス張り替えや外壁塗装といった簡易的な工事であれば不要なケースがほとんどです。一方、間取りの変更をともなう大規模なリフォームは、現況図が必要です。現況図がない場合、現況調査アプリ「りのべっち」のような3Dスキャンツールを使うと、簡単に図面を作成できます。
また、建築CAD「ARCHITREND ZERO」を活用すれば、リフォーム用図面の作成やプレゼン、積算見積もりまでトータルで行えます。正確な図面を用意することで、リフォームのミスやトラブルを未然に防げるでしょう。
本記事に関連する製品はこちら
●りのべっち 製品紹介ページ
https://archi.fukuicompu.co.jp/products/rinovetchi/index.html
●【動画】りのべっち 紹介動画
https://youtu.be/grdmtIh6Zxk
●ARCHITREND ZERO 製品紹介ページ
https://archi.fukuicompu.co.jp/products/architrendzero/index.html
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●【動画】リノベーション機能 紹介動画 ARCHITREND ZERO
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●【動画】耐震診断/リノベーション動画 ARCHITREND ZERO
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