安全パトロールとは
安全パトロールとは、製造業や建設業などの現場に潜む課題をいち早く発見して、労働災害の防止や安全衛生意識を高める活動のことです。担当者が事務所や工事現場、建設現場などを巡回して、危険箇所はないか、安全を意識しながら業務ができているかなどを確認します。改善が必要な箇所を発見した場合は、改善できるように促して現場全体の安全水準の底上げを目指します。労働災害は、ちょっとした気のゆるみや不注意から起こるケースが多いです。とくに、製造業や建設業は労働災害の発生率が高いため、重要性の高い取り組みとして認識されています。
安全パトロールを行う3つの目的
ここでは、安全パトロールを行う3つの目的をご紹介します。なぜ安全パトロールを実施しなければならないのか理解するためにも、参考にしてみてください。
労働災害を未然に防ぐために危険な箇所、作業を発見する
1つ目は、労働災害につながる危険な箇所、作業をいち早く発見するためです。
厚生労働省が公表している「令和6年 労働災害発生状況について」によると、労働災害での死亡者は減少傾向にあるものの、休業4日以上の死傷者数は近年増加傾向にあります。2025年も、同じような傾向が見られると考えられます。
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2024年の労働災害の発生状況 |
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死亡者数 |
746人(昨年より-9人) |
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休業4日以上の死傷者数 |
135,718人(昨年より+347人) |
企業には、労働者が安全かつ健康に働けるように配慮する「安全配慮義務」が求められています。そのため、労働災害が発生すると、企業側は社会的な責任や民事責任などを問われる可能性があるのです。だからこそ、日頃から安全パトロールを通じて死亡事故やケガに関連する行為を早期発見して、労働災害を起こさない職場づくりをする必要があります。
現場で適切な安全対策ができているか確認する
2つ目は、現場で適切な安全対策ができているか確認するためです。
現場監督や安全衛生委員会などが「ヘルメットは着用してください」「機械操作は2人以上で行ってください」などの指示をいくら出しても、現場が守っていなければ事故やケガにつながります。そこで、定期的に安全パトロールを実施して、ルールや指示を遵守できているか確認します。安全パトロール中にルールを逸脱している行為があればその場で注意をして、安全を意識して業務ができるように促します。このように、現場の安全衛生を適切に管理することで、信頼関係を構築しながら事故やケガの原因を作らないことも、安全パトロールの重要な目的です。
現場の緊張感を維持する
3つ目は、現場の緊張感を維持するためです。現場での作業や施工管理に慣れてくると「今日は異なる方法に調整して取り組もう」「人手不足だから不要な工程を省こう」等、気がゆるむ可能性があります。この状態が恒常化してしまうと、大きな事故の要因になると考えられるでしょう。安全パトロールをすると、常に第三者の目がある意識を持てるようになります。労働者はルールやマニュアルに沿って業務をするなど、当たり前のことを当たり前に実施するよう心がけられるでしょう。いい緊張感があるなかで業務ができて、気のゆるみから来るトラブルが起こりにくくなります。
安全パトロールを実施する時期・頻度
安全パトロールを実施する時期や頻度は、職種や事業内容などにより変動します。一般的には衛生管理者は1週間に1回以上、産業医は1か月に1回以上など頻度を決めて計画的に実施することが多いです。事前に年間計画を立てて、どのタイミングで安全パトロールを実施するのか決めておくと、滞りなく取り組めるようになるでしょう。また、企業によっては、「安全パトロール週間」を設けて、安全パトロールを強化する期間を設けているケースもあります。
安全パトロールの担当者
安全パトロールは、衛生管理者や安全管理者、安全管理委員会が中心となり実施します。安全管理者や産業医が巡回するのではなく、担当者を決めて取り組むケースもあります。また、管理職や経営層も合同でパトロールして、現場の安全意識向上を目指すケースや、外部の専門業者と連携して、より専門的な視点で改善の助言をもらうケースも考えられるでしょう。安全パトロールは企業全体で取り組む活動なので、特定の担当者に負荷がかからないように多くの人を巻き込みながら実施することが大切です。
安全パトロールでチェックする項目
安全パトロールでチェックをする項目は、現場の課題や規模、作業内容により大きく異なります。現状を把握したうえで、自社に合うチェック項目を作成することが大切です。ここでは、基本的なチェック項目に焦点をあてて、具体的なチェック項目をご紹介します。
労働環境
安全パトロールでは、安全と健康に配慮した労働環境を維持できているか確認します。業務内容により留意すべき点は異なりますが、一例として下記のような項目が検討できます。
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【労働環境のチェック項目の例】 ・清掃が行き届いているか ・粉塵、悪臭など人体に影響を及ぼす労働環境になっていないか ・転倒の危険がある場所はないか ・残土が崩れる恐れがある不安定な積み方をしていないか ・施工管理に必要な明るさを確保できているか ・防災対策として消火器や救急用具が指定の場所に置かれているか |
たとえば、清掃が行き届いておらず、床に工具が散乱している、資材が片付けられていない状態だったとしましょう。重い荷物を運搬している労働者が工具につまづき転倒するリスクがあるので、改善するべきポイントとしてチェックをしていきます。また、粉塵や悪臭など、人体に影響を及ぼす作業をしている際は、健康を害する環境に陥っていないかも確認します。
設備・機器
安全パトロールでは、設備や機器の安全性と使い方を確認します。作業現場に導入している設備や機器によって確認するべき箇所は異なりますが、一例として下記のような項目が検討できます。
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【設備・機器のチェック項目の例】 ・日常点検を問題なく実施できているか ・適切な場所で設備を使用できているか ・足場の手すり・端部の止め・幅木が適切に設置されているか ・トラックの搬入時に危険区域で作業をしていないか ・クレーン車の転倒防止作業をしているか |
例えば、現場でクレーン車を扱う事例では、適切な操縦をしているか、クレーン車周囲の安全確認ができているかなどをチェックします。また、足場を組む場合は、墜落・転落防止のために、足場の手すり・端部の止め・幅木が適切に設置されているかなども、目視で確認していきます。
労働者の働き方
安全パトロールでは、設備や環境だけでなく労働者の安全意識や雇用条件なども確認します。一例として下記のような確認項目が検討できます。
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【労働者の働き方の例】 ・無理な姿勢や作業手順省略などルール、利用規約外の方法で業務をしていないか ・操縦する機械の免許を保有しているか ・残業時間が超過していないか ・ヘルメット着用など安全を意識した服装のルールを守れているか |
例えば、ヘルメットや安全靴の着用が必須となっている現場では、作業員が意識できているかを確認します。また、現場では労働者に4S(整理・整頓・清掃・清潔)を意識してもらうケースが多いです。4Sの意識が低下しているかどうかも安全パトロールで確認して、指導するポイントになります。
安全パトロールを実施する手順
安全パトロールでチェック項目が理解できたところで、安全パトロールを実施する具体的な手順を確認しておきましょう。安全パトロールは計画的に取り組むことが大切なので、事前に流れを確認してみてください。
手順1:安全パトロールを実施する計画を立てる
まずは、安全パトロールの計画を立てます。下記のような詳細項目を明確にして、スムーズに実施できるようにしておきましょう。
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【安全パトロールの計画の項目・目次】 ・実施日時と時間 ・安全パトロールの目的 ・担当者 ・巡回する範囲、順路 ・チェック項目 |
とくに、重要なのは、安全パトロール前に現場ごとにチェックリストを作成しておくことです。勘と経験に頼りパトロールをしてしまうと、危険箇所を見逃してしまう可能性があります。事前に、今回の安全パトロールで確認しなければならないポイントを一覧にしてまとめておきましょう。
手順2:現場に出向き安全パトロールを実施する
続いて、計画に沿って現場に出向き、安全パトロールを実施します。現場では、事前に作成したチェックリストに従って、安全状態を1つずつ確認していきます。写真や動画に納めたほうがいい危険箇所がある場合は、その場で撮影をして後から振り返りができるようにしましょう。また、安全に配慮されていない箇所が発見された場合には、小さなことであってもできる限りその場でコミュニケーションを取り解決を図ります。例えば、床に工具が散乱していた場合は、その場で担当者と会話をして状況を把握します。そのうえで、改善案を提案して、できる範囲での改善を試みます。
手順3:安全パトロールの報告書を作成する
安全パトロールが終了したら、報告書を作成します。安全パトロールで感じたことやチェックリストを参考にしながら、課題や改善点を書き出しましょう。記載した報告書は一定期間保管をして、安全パトロールの履歴が分かるようにしておきます。過去の報告書を保管しておくと、今回の報告書と過去の報告書を比較することも可能です。課題が改善できているか、安全意識は向上しているかなど確認して、現在の課題を認識しましょう。
手順4:安全パトロールの報告書を現場と共有して改善を仰ぐ
安全パトロールの報告書は現場に報告して、現在の課題、良い部分を認識してもらいます。改善しなければならない箇所がある場合は、改善する時期を決めて現場に動いてもらえるよう指示を出しましょう。また、安全パトロールの結果を朝礼や会議などで共有する機会を設けて、労働者と改善点を話し合う機会を設けることも有効です。安全パトロールでは、今回ご紹介した手順を繰り返し実施して、安全衛生の改善と安全意識の向上を促進していきます。
安全パトロールを実施するときの注意点
ここでは、安全パトロールを実施するときに意識したい注意点をご紹介します。安全パトロールをより意義のある取り組みにするためにも、参考にしてください。
全労働者を対象に実施する
安全パトロールは、対象の場所で働く全労働者を対象に実施しましょう。一部の労働者や役職者のみを対象にしても、現場の危険を未然に防ぎきれないためです。例えば、パートやアルバイト、協力会社の従業員であっても、同じ現場で働いているなら、安全意識を向上していく必要があります。曜日や時間帯により勤務している労働者が変わる場合は、全従業員が安全パトロールの対象となるように、年間計画を立てるといいでしょう。
口頭での注意だけでなく現場に浸透する方法を模索する
安全パトロール後の改善は、報告書の提出や口頭での指摘だけでは現場に浸透しにくいです。例えば、安全パトロール時に注意を受けてその場では「気を付けよう」と思えても、時間の経過とともに安全意識が薄れる可能性があるでしょう。安全パトロールで見つけた課題を根本的に改善するには、改善策が現場に浸透する方法を模索する必要があります。下記のように、具体的な対策を検討して、その場しのぎの対策で終わらせないようにしましょう。
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【現場に浸透する改善例】 ・毎朝危険箇所の安全チェックをする習慣をつける ・各危険箇所にステッカーを貼るなどの掲示をする ・現場での違反行為をまとめたポスターを掲示する |
安全パトロール後の改善は誰がいつまでに実施するのか明確にする
安全パトロール後は必要な改善を確実に実施できるように、誰がいつまでに対応するのか決めておきましょう。例えば、現場の整理整頓に課題がある場合は、誰がどの範囲をいつまでに整頓するのか決めます。そして、責任者が安全衛生委員会などに報告する仕組みを整えます。安全パトロール中に複数の課題が見つかった場合は、合理的な方法で優先順位を決めましょう。優先順位の高いものから順に確実に取り組むことで、実効性を高められます。
安全パトロールを効率化する方法
安全パトロールは継続して取り組まなければならないので、少しでも効率化する視点を持つことが大切です。ここでは、安全パトロールを効率化するための具体的な方法を、いくつかご紹介します。どのように効率化を実現できそうか、参考にしてみてください。
リモート点検を取り入れる
安全パトロールでは、衛生管理者や安全管理者などの担当者が現場に出向く必要があります。拠点が複数ある場合や現場が遠い場合は、現場への移動が負担となりやすいです。そこで、現場での点検とリモートでの遠隔点検を組み合わせることで負担を減らしつつ、安全パトロールの効率化が目指せます。例えば、現場での安全パトロール後の確認をリモート点検で行えば、現場まで足を運ばなくても改善できているかが確認できます。また、安全パトロールの年間計画を立てるときに、バランスよくリモート点検を組み込むことで、頻度を増やせるでしょう。
管理ツールを活用する
安全パトロールの実施時には、スケジュールや報告書、改善(是正)報告書など複数の書類や資料を作成、保存しなければなりません。安全パトロールの管理そのものに手間がかかりやすく、積極的に取り組めないケースもあるでしょう。そのような場合は、安全パトロールの管理ができるツール、サービスの導入が役立ちます。ツールの活用は、DX推進効果も見込めます。建設現場の管理、情報共有ができるツール「現場Plus」では、安全パトロールの一元管理ができる以下のような機能が揃っています。
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【現場Plusの安全パトロールに関する機能例】 ・安全パトロールのスケジュールの一覧表示 ・スマートフォンやWebからの確認、更新 ・自由に構築できる点検テンプレート ・点検報告書や是正報告書の自動作成 |
例えば、安全パトロールの日時や担当者、実施状況を一覧表示できるため、抜け漏れが発生しにくくなります。「現場Plus」の導入に関するご相談は随時受付していますので、お気軽にお問い合わせください。
▼現場Plusでは、安全パトロールの報告書の出力サンプルをダウンロードして確認できます
安全パトロールは建設業の安全対策に重要な取り組み事項
本記事では、安全パトロールに関する基礎知識をまとめて解説しました。安全パトロールは労働者の安全意識を高めながら労働災害を防ぎ、健全に業務するために欠かせない活動です。計画的に安全パトロールに取り組むことで大きな事故やケガが起こる前に、改善を重ねられるようになります。また、安全パトロールは継続して取り組み、労働者の安全意識を高めていくことも重要な役割です。担当者にかかる負担を削減しつつ取り組むためにも、建設現場の管理、情報共有ができるツール「現場Plus」の利用をご検討ください。
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