KY活動は事故・災害を防止するためのプロセス
職場・現場で行われているKY活動は、事故や災害を未然に防ぐために継続して行われるプロセスであり取り組みです。
KY活動の公的な定義
「KY活動」とは、危険の「K」と予知の「Y」を使った言葉であり、危険予知活動とも呼ばれています。KY活動・危険予知活動の公的な定義としては、厚生労働省の説明を見てみましょう。“事故・災害を防止するには、業務を始める前に、「どんな危険が潜んでいるか」を職場で話し合い「これは危ないなぁ」と危険のポイントについて合意します。そして、対策を決め、行動目標や指差し呼称項目を設定し、一人ひとりが指差し呼称で安全衛生を先取りしながら業務を進めます。このプロセスがKY活動です。”
引用:厚生労働省 資料「KY活動 KY活動とは」(PDF)
KY活動が職場の全員で取り組むものであることがよくわかる定義になっています。
職場での取り組み
KY活動の定義にしたがって職場での取り組みを考えれば、以下のようになります。
1.職場のみんなで業務開始前に話し合う
2.潜在的な危険ポイントについて合意する
3.対策を決めて行動目標や指差し呼称項目を設定する
4.業務の進行にあたって各自が指差し呼称を実践し安全衛生を先取りする
この4つの行動を順を追って行うこと、そのプロセスをキチンと実施に移してこそKY活動だという理解でよいでしょう。つまり、1つでも抜けていればKY活動とは呼べないか、呼んだとしても不完全なものとなります。
KYTとは
KY活動ではKYTという言葉が出てきます。KYはそのままでトレーニングのTを付け加えた言葉がKYTです。危険+予知+トレーニングで危険予知訓練と呼ばれています。KYT危険予知訓練とはどのような訓練でしょうか。前出の厚生労働省資料の説明では、KY活動推進に必要な手法を習得するために行われるとされています。また、同じく厚生労働省の職場の安全サイトでは以下のように説明されています。
“作業や職場にひそむ危険性や有害性等の危険要因を発見し解決する能力を高める手法”
引用:厚生労働省 職場の安全サイト「安全衛生キーワード 危険予知訓練(KYT)」
KYTの具体的な手法としては、後述する基礎4R法が有力です。
職場のチームワークを高めるKY活動
KY活動は職場の全員が安全意識を高めて一緒に取り組むものです。話し合いを重ね、共通する指差し呼称を行うことでコミュニケーションの円滑化、活発化がもたらされます。その結果、職場のチームワークを高め、業務効率が向上するなどプラスの効果は多数です。もちろん、主目的である安全衛生環境が改善され、労働災害が発生しにくくなる可能性が高いことはいうまでもないでしょう。
KY活動とリスクアセスメントとの違い
KY活動とよく比較されるものにリスクアセスメントがあります。KY活動が安全のための行動を伴うのに対し、リスクアセスメントはリスクの洗い出しと評価を目的とする点が大きな違いです。違いはあるものの、KY活動もリスクアセスメントも安全な職場環境の創出や労働災害の減少には不可欠といえ、どちらか一方だけを行えばよいというものではありません。KY活動における潜在的な危険ポイントの合意プロセスなどは、リスクアセスメントの主眼であるリスクの洗い出しと評価に通じるものだといえるでしょう。
KY活動で重視するヒューマンエラー
なぜKY活動が欠かせないのか、その理由はヒューマンエラーにあるといっても過言ではありません。
ヒューマンエラーが災害につながる
労働災害の大部分がヒューマンエラーのみまたはヒューマンエラーが絡む原因によって起きています。厚生労働省の資料によれば、その割合は96%以上です。ヒューマンエラーに確定的な定義はないといわれており、日本語では不安全行動という言葉があてられています。不安全行動といっても漠然としたイメージでよくわからないかもしれません。大まかな解釈ではあるものの「見間違い」や「やり忘れ」、「やり間違い」など意図していないところ、つまり過失で「ちゃんとした手順でやらないこと」がヒューマンエラーだといえるでしょう。また、意図して(故意に)ちゃんとした手順でやらないヒューマンエラーもあります。KY活動においてヒューマンエラーにフォーカスすることで、災害リスクの低減が可能です。
出典:厚生労働省 資料「KY活動 災害はなぜ起こるのか」(PDF)
ヒューマンエラーの原因
ヒューマンエラーが起きる原因には、うっかり、勘違い、思い込み、教育不足などがあります。これらが原因となって発生するのは過失によるヒューマンエラーです。一方で、近道反応や省略行為といった故意のルール軽視によってもヒューマンエラーは起こり得ます。ただし、近道反応や省略行為の場合、本人としては問題ないどころか効率的だと思っている可能性が高い点に注意が必要です。また、故意によるヒューマンエラーはヒューマンエラーではなくただの違反であるとする考え方もあります。
KY活動の進め方
KY活動の効果的な進め方について解説します。
基礎4R法によるKYT
KY活動を推進するにあたり、その手法の訓練(KYT)手段として活用されている方法に基礎4R(ラウンド)法があります。基礎4R法はKY活動の基本であるチーム(職場)で協力して潜在的な危険を見つけ、解決する流れで行われる訓練手法です。チームメンバーで役割分担し、現状把握、本質追及、対策樹立、目標設定の4ラウンドに分けて実施します。分担する役割は、司会進行役を務めるリーダー、記録係を担う書記、結果をまとめて発表する発表者、その他の討議者です。
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ラウンド |
実施すること |
内容 |
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1 |
現状把握 どんな危険が潜んでいるか |
職場の危険について現状把握するラウンド ・職場で参加可能な人はできるだけ出席する ・イラストシートや現場を利用する ・どのような危険が潜んでいるかを洗い出す ・危険の種類や程度にかかわらず可能な限り洗い出す |
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2 |
本質追及 これが危険のポイントだ |
洗い出した危険の本質を追求するラウンド ・洗い出した危険から重要項目にチェックを付ける ・チェックを付けた中から絞り込んでピックアップする ・ピックアップしたものを危険のポイントとして全員で認識 ※危険ポイントを指差し呼称を唱和する |
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3 |
対策樹立 あなたならどうする |
危険のポイントに対する対策を立てるラウンド ・メンバーで対策案を話し合う ・具体的な対策案を出し合う ・実現可能な対策案になっているかを確認する |
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4 |
目標設定 私たちはこうする |
目標を設定するラウンド ・対策案の中から重点的に実施する案をピックアップする ・ピックアップした案を重点実施項目とする ・重点実施項目に対する具体的な行動目標を設定する ※チームの行動目標を指差し呼称を唱和する |
イラストシートを利用する際は、書かれている状況を現実の現場だと思って取り組みます。イラストには簡単な状況説明のテキストが書かれており、その内容を前提として考えることが重要です。たとえば、脚立の上で窓拭きをしているイラストには、「脚立を使って窓拭きをしている」などと書かれています。危険の洗い出しや対策案の提案に際してはすべてを紙に書き出します。紙に書くことでメンバーの誰からも見えて、出されたにもかかわらず忘れることがありません。また、ピックアップ時には〇印や下線などで強調することができます。後述する危険予知訓練シートを利用すれば、書き込む項目が用意されているため円滑な訓練の進行が可能です。※KY活動において指差し呼称は重要な行動です。危険ポイントとチーム行動目標は全員で指差し呼称を唱和することで意識を高めます。唱和するフレーズの後ろには「ヨシ!」を付けることが重要です。
危険予知訓練シートの利用
基礎4R法の内容をチェックシート化し、可視化することでKTYをやりやすくするアイテムが危険予知訓練シートです。一般的な危険予知訓練シートには、イラストシートのようなイラストが描かれているものもあれば、イラストが描かれていないものもあります。イラストシートが別にある場合や現場をKYTに使用する場合はイラストがないものを使うとよいでしょう。危険予知訓練シートを作成することで、1Rから4Rまで基礎4R法によるKYTを実施した活動記録として残せます。KYTは訓練、トレーニングではあるものの、その内容は本番そのものであり、KYTがそのままKY活動の本番だといっても差し支えないでしょう。
KY活動のマンネリ化とは
KY活動はマンネリ化が問題になっています。マンネリ化することにより、KYTをやろうとしても危険の洗い出しができず、危険ポイントも選べません。表面的には安全で安心な職場だということになりそうですが、実際には潜在的な危険が放置されているだけの可能性が高いといえるでしょう。ここではマンネリ化の原因を中心にリスクなども解説します。
KY活動は継続して行われるため慣れが生じる
KY活動は1度で終るものではありません。職場全体に安全意識を浸透させるためには、長時間の活動を単発で行なうよりも、短時間でも頻繁に継続して推進することが重要です。そのため、その日の作業開始前などに毎日実施することが理想だともいわれています。ところが、人間は慣れる動物です。同じ作業を毎日繰り返していると新鮮味が薄れて慣れが生じ、いつの間にかマンネリ化してしまうことがあります。マンネリ化してしまうと危険を危険だと思わなくなったり、自分事として考えられなくなったりしてヒューマンエラーにつながりかねません。
風通しがよくない職場では意見が出にくい
頻繁に実施するKY活動では、活発な意見交換やアドバイス、報告がしやすい職場環境であることが前提でなければ効果的な運用は難しいかもしれません。風通しがよくない職場、つまり意見を出しにくい雰囲気が蔓延している職場や、コミュニケーション不足が懸念される職場では、1回2回は目新しさもあって意見を出し合えたとしても、次第に低調になってしまうおそれがあります。また、下手なことを喋れば何をいわれるかわからないといった心理的ハードルが高い状況がある場合も同様です。ついには、ほとんど意見が出ない集まりを「またやるのか」「いつものことだ」といった反応になってしまいマンネリ化が進むことになりかねません。
正常性バイアス
根拠なくこの状態でも自分は大丈夫だと思い込んだり、実際には大事であるにもかかわらず、この程度なら大きな問題ではないと都合よく考えてしまう正常性バイアスは、KY活動の現場にも入り込んできます。根拠なくとはいうものの、本人は長年の経験などから「このくらいなら自分は大丈夫だろう」といった考えをしてしまいがちです。その結果、毎日のKY活動は危険の過小評価による慣れが生じ、マンネリ化が進んでしまうおそれがあります。
ネタ切れでこれ以上やることがない
KY活動がマンネリ化する大きな原因としてよくいわれる”ネタ切れ”も、毎日のように継続して実施するからこそ起きることだといえます。KY活動におけるネタ切れとは、危険の洗い出しをする対象となる現場が尽きてしまうことです。言い換えれば、各現場で洗い出すべき危険が残っていないことになります。本当にネタが切れてしまったのならともかく、多くの場合はそうではありません。実際にはネタがキレたのではなく、ネタを探す角度が変わり映えせず、マンネリ化に陥っているのです。また、慣れによるマンネリ化がネタに気付かせない面もあります。最初の頃なら「これは!」と思ったネタであっても、回を重ねることで感度が鈍くなってしまい、ネタだと気付かないままになってしまうのです。
マンネリ化を乗り越えてKY活動を推進する方法
マンネリ化でKY活動の効果が低下することがないように、マンネリ化を乗り越えてKY活動を推進する方法を紹介、解説します。
新しい視点に目を配る
長く現場で働いている人、継続してKY活動をやっているメンバーは、視点が固定化されやすいといえます。固定化された視点はマンネリ化につながるため、マンネリ化を打破するために新しい視点に目を配ることが重要です。視点が固定化されてしまう理由は、いつもの風景にあるといえます。毎日のように見ているモノは、その状況が当たり前のようになってしまうことから、明らかな変化は別にして、潜在的な危険には気付きにくくなってしまってもおかしくはないでしょう。しかし、そのままにしておくわけにはいきません。新しい視点に目を配るとは、先輩社員だけでなく新入社員や若年層、他部署の要員の視点を積極的に取り入れることを指します。遠慮なく意見を出してもらい、ベテランが見落としていた危険や、思いつかなかった対策案を引き出し、KY活動の活性化を狙うのです。自由な発言を求めるだけでは遠慮されるかもしれないため、指名して具体的に課題を質問してみる手もあります。
他所の事例を自分の職場に置き換えて考える
自分の職場ではどれだけ新しい視点で検討してもネタ切れだと感じる場合、他所の事例を参考にすることで、いままで気付かなかった視点を得られる可能性があります。他所の職場には違ったネタがあるものです。マンネリ化を防ぐためには、適度に新しい事例に触れたほうが効果的でしょう。事例の勉強会や外部講師を招聘してのセミナー開催なども有効です。
安全なモノを疑ってみる
メンバーの共通認識として安全だと思っているモノに潜在的な危険を感じることはまずないでしょう。なぜなら当たり前に安全だという答えが自分の中にあるからです。しかし、マンネリ化はこういった当たり前が引き起こすことがあります。それは本当に安全なのか疑ってみることで、マンネリ化を阻止してしっかりと危険と向き合う目が養われる可能性が高まるでしょう。
職場の見える化を進める
知っているけど知っているからこそ見落としがちな部分というものがあります。知っていることが「ここはもういいよ」といったマンネリ化につながる可能性があるためです。このような見落としを拾うために、職場の見える化を進めることはKY活動に役立ちます。有効な手段のひとつとして、防犯カメラでリアルタイムの「見える化」をサポートする方法があります。防犯カメラを通して見る現場は、いつもの肉眼で見る現場とは違う景色に見えることがあります。見落としがちな部分をレンズ越しに見ることで、危険を察知できる可能性があります。また、人間の動線では視覚になる部分のフォローに有効です。事故などの危険な事態が発生した場合、その瞬間をビジュアルで認識することができ、KY活動の題材にできます。実際の映像は何百回と口頭で説明するよりもリアルに感じられるでしょう。原因の検証材料として、対策の参考としても防犯カメラの映像は効果的です。見られていることへの意識付けが安全意識の高まりにもつながります。防犯カメラがない場合でも、ヒヤリハットの現場を写真などで可視化することはマンネリ化対策のひとつです。静止画には動画とは違う説得力があります。KY活動で重要なことは、活動が目的ではなく現場重視で事実を前提に考えることです。形式的な活動になってしまうとマンネリ化が進みます。
その日の特徴にフォーカスする
いつもと同じ作業内容などでは新しい気付きが生まれにくいため、他の日とは異なるその日の特徴に着目して危険の洗い出しに着手します。作業内容のちょっとした違いでも構いませんし、天候の違いでもよいでしょう。晴天と雨天では危険の見方が変わるケースは少なくないと考えられます。
意識づけを徹底する
何のためにKY活動を行っているのか、その目的を再確認し、初心に帰って意識づけを徹底することがマンネリ化を防止するうえで重要です。KYTの役割分担や進行の工夫なども考えられます。同時にちょっとしたことでも報告しやすい環境を作ることにも忘れずに取り組みましょう。KY活動において出されて困る意見はない、意見を出すことはよいことだといった意識の浸透が必要です。
ツールを活用する
日々の意識づけと注意喚起が欠かせないKY活動において、危険予知活動を自動で知らせてくれるツールは有用です。たとえば、現場Plusなら入場処理とKY活動のリンクで事故の防止に役立ちます。
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KY活動はツールの活用も含めてマンネリ化を回避して推進しよう
KY活動は建設・建築業に限らず職場、現場に潜む危険を洗い出し、重要度の高い危険ポイントへの対策を出し合い、重点実施項目を決めて具体的な行動目標を設定する危険予知活動です。その目的は事故・災害の防止であり、コミュニケーションが円滑で安全性の高い職場環境の実現だといえるでしょう。KY活動の実践的トレーニングに基礎4R法がありますが、KY活動にしろKYTにしろ、継続することでマンネリ化のリスクがあります。マンネリ化の防止策はさまざまありますが、ITツールの利用も含めてマンネリ化を回避し、安全で明るい職場を目指してKY活動を推進しましょう。
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