G-Style Forum VOL.1 開催!「建設会社のためのこれからはじめる施工BIM」
6月24日、福井コンピュータアーキテクトは日本の施工BIMに関わる最新動向を紹介する建設会社向けBIM情報発信イベント「G-Style Forum」を開催しました。近年注目が高まる「施工BIM」をテーマに、ゼネコン、地場大手建設会社と測量機器メーカーによる施工BIM取り組み事例を中心とする充実した内容により、YouTubeによる生配信には全国から多数の視聴者が参加しました。ここでは弊社社長挨拶と4つのセミナーの抄録をお届けします。
開会挨拶 福井コンピュータアーキテクト/代表取締役社長 田辺竜太
「皆さん、こんにちは。本日はお忙しい中、G-Style Forumに多数ご参加いただき、まことにありがとうございます」。そんな言葉で始まった福井コンピュータアーキテクト代表 田辺竜太の開会挨拶は、今回の「G-Style Forum」がBIM分野向け新イベントブランドの第1回であること。そして、このG-Style Forumを住宅業界向けのA-Style Forumと2本柱で展開していくことを宣言しました。
さらに、GLOOBEの開発方針について、リビジョンアップしたGLOOBE 2022 R1がそうであるように、設計・施工をシームレスに繋げながら主に施工分野で機能を強化。合わせてGLOOBEによる3Dモデルの活用も単なる見える化を超え、建設DXのためのそれとして拡大していくと力強く表明しました。
「3Dデータを徹底的に活用して現場を便利にしていく。そんな思いを持って開発を進めて参ります。今後もぜひご期待ください」。
【セミナー(1)】竹中工務店 最上佳彦 氏
「本日は国土交通省BIMモデル事業における事例を基に、オープンBIMによる維持管理・運用BIM作成の取り組みについてお話します」。竹中工務店 BIM推進室の最上佳彦氏の講演が始まりました。「オープンBIM」は竹中工務店のBIM最大の特徴で、その現場に参加する専門業者は、それぞれ使い慣れたBIMソフトを自由に使えます。各業者の価値観や手法、工夫を全て受け入れることで、BIMから最大の効果を得ようというのです。今回の維持管理・運用BIM作成もこのオープンBIMで行われました。
最上氏はまず、維持管理・運用BIM作成の4ステップを解説します。「IFCモデルを確認」し設計施工BIMのデータ構成を調べ、次に施工BIMでフォローされなかった情報やFM業務で必要な情報を追加し「維持管理BIMのベースを構築」。さらに竣工後「設備BIMを追加」し、最後に「FM分類の追加とマイニング」を行い完成します。そして、この一連の作業に使われたのが、FMを視野に開発されたGLOOBEです。完工後、維持管理BIMを早期稼働するには必要な情報をBIM側で作り込むことが重要で、それが可能だったのがGLOOBEでした。
その後、最上氏は実例を上げて、オープンBIM環境下での維持管理運用BIM作成を詳説。さまざまな知見を惜しみなく紹介していきました。たとえば──維持管理BIMは、どの機器が何階のどの部屋に何台あるか等、全てを関連させたリレーションモデルであるべきこと。施工で扱う数量とFMで必要な数量は異なることを理解し、上手く作り込む必要があること等々、最後まで視聴者の注目を集めていました。
【セミナー(2)】MILKEN 見谷組 橋本 哲 氏
続いて福井市の建設会社、MILKEN見谷組の橋本哲氏が登壇し、まず自身の講演テーマについて紹介しました。「テーマは“BIMで叶える彩り鮮やかな仕事スタイル”。つまり、建造物を作る過程をBIMで共有・共感の持てる彩り鮮やかなものに変革し、仕事をより楽しいものにしたいという考えです」。見谷組では2015年にGLOOBEを導入してBIMの活用を開始しましたが、現在では現場での運用を着実に拡大する一方、協力会社も巻き込んでチームによるBIM普及活動も展開中です。
そんな同社の最新の取り組みとして紹介されたのが国交省BIMモデル事業です。これは令和3年度のBIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業のうち中小事業者BIM試行型のそれで、同社は2021年に基礎工事に限定した仮想プロジェクトでの活用試行に採択されました。「試行の目標は実利あるBIM活用。一つのBIMモデルから変換や自動処理により多様な成果物を生成し、作業や業務に直接的に利用することで、さまざまな実利ある効果を生み出すことが狙いです」。実際、現場ではICT建機・機器との連携や施工図作成、数量集計や施工計画、施工検討等も検証したとのことで、講演では特にICT建機との連携について詳細に説明されました。
その他にもドローン空撮写真とBIMで作ったパース合成による建設的な完成予想の提示やプレカットデータや鉄骨施工図データをBIMモデル化し納まり検討した事例等々、実務におけるBIM活用例が多数公開されました。
【セミナー(3)】トプコン 和田健介 氏
「3番目のセミナーは“測量機器メーカーが語る施工BIM”と題し、最新の3次元計測システムを用いた、施工現場でのBIM活用についてご紹介いたします」。そんな言葉で講演の口火を切ったのは、国内トップシェアを誇る測量機器メーカー、株式会社トプコンの和田健介氏です。和田氏の言葉どおり、講演は測量機器メーカーの視点で“誰でも分かるように簡単に実現できる施工BIM”の紹介が中心となりました。設計データを可視化し計画や施工を円滑に進めることが現状のBIMのスタートとなりますが、BIMデータを3Dのまま現場で活用できている例は多いとは言えません。
「そこで座標データや面データ等を使って3D設計データを施工に活かし、さらに竣工した建物モデルデータや点群データをBIMデータと照合し検査していくという風に、データを循環させることが、トプコン製品による施工BIMソリューションと言えます」。精密に位置を計測するトプコンのコア技術は建設現場に不可欠で、そこには「誰でも簡単に正確な位置出ししたい」というニーズがあります。
「これに応える新製品が現場向け高精度位置出しシステム“楽位置”です」という和田氏の言葉通り、誰でも簡単に高精度な位置出しを1人ででき、GLOOBEとの連携で活用の幅も広がる「楽位置」に加え、ICT建機用MGシステム「杭ナビショベル」や点群活用システム等々、多くの製品が具体的な活用手法と共に紹介されたほか、各種施工BIM体験も可能な新施設「BuildTech」も紹介されました。
【GLOOBE 2022R1のご紹介】
3時間にわたるG-Style Forumの最後に登壇したのは、当社BIM事業部で開発を担当している谷原康介でした。「本日はGLOOBEのコンセプトと皆様にぜひ普段使いしていただきたい機能について紹介するほか、7月13日リリース予定のGLOOBE 2022 R1もご説明します」。GLOOBEには設計BIMに特化したGLOOBE Architectと施工BIM向けのGLOOBE Constructionがあり、両製品とも各実務での活用はもちろん、設計、施工、維持管理に渡るデータ連携が大きなポイント。特にGLOOBE Constructionの普段使いできる施工BIM機能─会議・コミュニケーション、納まり検討・施工図、安全管理、施工計画、工事管理、数量情報等の機能を中心に、実機でのデモを交えながら分かりやすく解説していきました。そして、講演後半はいよいよGLOOBE 2022 R1の紹介となりました。
「GLOOBE 2022 R1の機能強化ポイントの一つ目は生産設計への対応強化です。仮設工事や土工工事においてBIM活用が拡大しており、これらに関する機能の拡充により施工現場でのBIMの利活用を促進します。また二つ目はデータ連携と利活用の強化で、オープンBIM対応を強化して繋がるBIMを進化させます」。前者では、仮設計画における枠組足場や仮設昇降機の入力機能を追加し、土工計画の根伐図カラー表示や仮置土に対応。後者では公共座標系でGLOOBEモデルの位置設定機能を加え、位置情報を考慮したGoogle Earth用3DモデルやICT建機で使えるLandXMLファイルも出力できるようになりました。