「設計施工維持一貫」システムのツールとして
GLOOBEを試行
わが国を代表するビッグゼネコン・竹中工務店では設計施工維持一貫体制を「最良の作品」を作るためのシステムとして定義し、BIMをこの主要ツールと位置づけ3次元CADを試行しています。「GLOOBE」についても2010年から試験運用し、大きな成果をあげています。試行プロジェクトを手がけた大阪本店設計部のお二人に伺います。
唯一の国産BIMとしてGLOOBEに注目
- GLOOBE試行の背景をご紹介ください
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畑中氏
当社では設計施工維持一貫を「最良の作品」を作るためのシステムとして定義し、その中で、数年前より複数のBIMツールを試行していましたが、「GLOOBE」は唯一の国産で入力等の考え方も斬新ということで、ぜひトライしたいという声が上がりました。そこでRC造2階建で延床1,200m2程の商業施設のプロジェクトを対象に、試行しました。
- BIM試行にはどのような狙いが?
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近藤氏
1つは2Dの設計業務を3Dに置き換え、どの程度効率化が図れるか測ること。そして2Dではできなかった新しい試みへの挑戦ですね。特に今回は3Dモデルから出力した数量を概算見積に生かすのが狙いでした。これはGLOOBEが他社製品より見積積算に適用しやすいと事前評価されたからです。
- 試行の具体的な流れをご紹介ください
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近藤氏
最初のモデルは方向性を出す段階で作った初期プランを元に入力し、このモデルから出力した図面でお客様と打合せを重ねながら約3カ月修正を進めました。対象がお客様の旗艦店的な店舗であり、通常店舗にない特殊な業態が付帯されスケジュールが非常にタイトだったため、GLOOBEの試行も設計段階は基本設計までとし、後は概算見積段階での積算との連携の試行を中心としました。
設計施工維持一環への可能性を実感
- 実際に試行されてみたご感想は?
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近藤氏
こうした試行は2度目ですが、今回は途中発生した課題を福井コンピュータに投げ、素早く対応してもらえたのがとても良かったです。プロジェクトを進めながらソフトも進化していく感じで、身近にベンダーがいる強みですね。とにかく2D図面と3Dを同時並行で作れるのは圧倒的なメリット。特にGLOOBEの場合、属性を登録しておけばオブジェクトに変換するので非常に楽でした。
- 具体的にどのように
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近藤氏
入力については福井コンピュータに協力を仰いだので、私はさほど使い込んでいませんが、面を配置し壁を立ち上げる操作感は、従来の設計手法と感覚的に近く、圧倒的に速い。2Dはいちいち通り芯を書くなど手間ですが、GLOOBEなら軽鉄の厚さやボードの種類など一度作ったものを登録しておけば、次からは選ぶだけでぽんぽん立ち上がります。もちろん調整は必要ですが、楽だし設計者の感覚にもフィットするのです。またGLOOBEならではの特徴という点では、当社設計現場で急速に普及が進んでいる3Dツール「SketchUp」との連携に優れている点も大きかったですね。
- 今回の収穫と今後の展望をご紹介ください
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近藤氏
初めて積算連携が実現され、部署間のつながりが実感できたのは大きかったですね。正直これまで雲を掴むようでしたが、今回ある程度BIMを具体的にイメージできました。
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畑中氏
当面は試行プロジェクトを積み重ね、各製品の設計・施工各段階における活用方法を抽出していく作業が中心となります。実際の業務との置き換えは、この辺りをきちんと整理してからになるでしょう。合わせて全社的な意識改革、行動改革、IT環境整備、そして個々のスキルアップも必要になってきます。とにかく、じっくり取り組んでいきたいですね。
※2012年発行のWind/fで掲載したものです。役職などは、取材当時のものです。