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A-Styleフォーラム Vol.11(2023年2月17日)

A-Style Forum VOL.11開催!「今から始める【4号特例縮小】対策」

2年後に迫る省エネ基準適合義務化に合わせ、建築基準法に定められた「4号特例」の大幅な縮小が確定しています。木造住宅を手がける建築士にとって、この法改正は大きな影響があります。4号特例縮小とはどのような改正なのか。どう対処すべきなのか。第11回を迎えた住宅情報発信イベントA-Style Forum Vol.11ではこの問題にフォーカス。最強の講師をお招きし、最新情報と適確な対応へのヒントをお届けしました。ここでは同イベントから2つのセミナーと福井コンピュータアーキテクトからのお知らせの抄録をお届けします。

【セミナー(1)】4号特例縮小で思わぬ罠!?

M's構造設計 構造塾 佐藤 実 氏

 最初のセミナーは、M's構造設計の代表でプロ向け構造設計セミナー「構造塾」を主催する佐藤実氏が登壇しました。佐藤氏はまず、「4号特例縮小」に関する情報は、複雑さ故に誤解されている部分が多いと言いました。

 「よくある勘違いですが、今回の改正は“4号特例縮小”で、4号特例廃止”ではありません。実際には4号特例の一部が無くなり一部残るという内容です」。勘違いは他にもあり、その一つが「仕様規定が無くなり木造2階建も許容応力度計算が義務化されるのでは?」という声です。実際には許容応力度計算義務化の予定はなく、従来通り仕様規定の簡易計算──壁量計算、4分割法、N値計算等で行うのは変わりません。変わるのは、確認申請での提出義務がなかったこれらが提出義務化され、チェックされるようになる点です。

 「中には“今後は壁量計算が必要に?”と不安がる方までいますが、木造2階建・平屋建では以前から壁量計算が義務でした。今までは確認申請に出さなくてよかっただけ。つまり、今やってなければ既に法不適合だったのです」。4号特例への理解が足りないからこんな誤解が生じると佐藤氏は言い、改めて「4号建築物とは何か?」から詳説しました。4号建築物の構造検討・計算では、許容応力度計算でなく仕様規定による計算検討が許され、壁量計算・4分割法・N値計算等3つの簡易計算と8項目の仕様ルールで行われること。また、それは確認申請への提出を省略できる──と4号特例について解説します。

3号建築物のみ特例が残る(セミナー資料より)

 「4号特例縮小により1~4号に分けていた建物の枠組が1~3号の3つに変わり、木造は小規模建築物の3号とその外の2号建築物の二つとなります。特例が残った3号は仕様規定での検討が許され提出義務もありません。2号も規模の小さな一部の建築は仕様規定で検討できますが、特例はなく確認申請時の提出が義務化されます。……高さ制限が変わり軒高は無くなって面積制限も変わりますが、整理して理解すれば対応は難しくありません」。

 さらに佐藤氏は4号特例縮小に対応した設計における留意点を挙げ、自らまとめた新仕様規定チェックリストを紹介。その上で、この新仕様規定の物足りなさも指摘し、建築士が目指すべきは許容応力度計算での耐震等級3であることを強く主張し講演を終えました。

 

【セミナー(2)】耐震設計のスキーム改革!

在住ビジネス株式会社 橋爪 智幸 氏

 続いて登壇したのは在住ビジネス株式会社の橋爪智幸氏です。社名の「在住」とは「在来工法住宅」を意味し、木造住宅の構造の設計支援を中心に敷地調査や地盤調査等を行っています。セミナー(1)では、4号特例縮小により木造住宅設計もより構造を重視していくべきとの指摘がありましたが、セミナー(2)では倒壊シミュレーションソフト「wallstat」による耐震設計の新スキ-ムが紹介されました。

 「wallstatは木造建築物における倒壊シミュレーションソフトです。パソコン上で木造建築物を3Dモデル化して、地震動を与えてアニメーション表示することで、振動台実験と同じ検証を可能にしています」。橋爪氏は実際にwallstatを立ち上げ、3Dモデルによる倒壊シミュレーションを行って見せました。モデル化した建築物に地震動を与えると、時間経過による建築物の状態変化が色分けされて分かり易く示され、その検証精度の高さが分かります。橋爪氏によれば、wallstatは実際の振動台実験では難しい室内損傷状況の確認や、熊本地震のように何度も襲う地震の損傷状況を引き継ぎ、繰り返し行う計算も可能です。

大地震建替ゼロへ(セミナー資料より)

 「たとえば2016年の熊本地震における益城町の被害状況を見ると地震直後の調査では新耐震基準の住宅も4%が大破し、さらに2%が倒壊。そして、2018年の調査は8%が建替え、10%は更地になりました」。新耐震基準に基づく家の約5分の1が、倒壊しなくても結局、住み続けられない住宅になってしまった、と橋爪氏は語ります。そして、木造住宅も建築基準法で保護すべき財産と考え、大地震に一回耐えるだけでなく大地震後も住み続けられる家を設計しなければならないと言います。

 「それには建築士が構造面をより重視してwallstatを活用していくことが、よりよい安心安全な設計に繋がるのだと思います」。そういって橋爪氏はwallstatの多様な活用事例やARCHITREND ZEROとの連携による効果を次々紹介しました。「特にZEROユーザーはwallstatと連携しやすく、効果は非常に大きくなります。ぜひこれを活用して設計初期段階から構造も一体に考え、地震後も住み続けられる家を提供いただければと思います」。

 

【製品紹介(1)】ARCHITREND ZERO:意外と知らない構造関連の便利機能

福井コンピュータアーキテクト 青柳 克彦

 続いて登場したのは福井コンピュータアーキテクトの青柳克彦です。住宅建材事業部で、ARCHITREND ZERO(以下 ZERO)の構造関係の開発を担当する青柳が、4号特例縮小対策の一つとしてZEROの構造関係の便利機能を紹介するコーナーです。

 青柳は平面図、壁量計算、構造図、構造計算の図面コマンド4つから、構造関連機能を取り上げました。平面図では意匠段階で構造面の問題を確認できる「建物チェック(構造)機能」。壁量計算前に耐震や耐風の目標等級をどれだけ満たしているか確認できる「耐震チェック機能」を、ZEROを操作しながら解説します。さらに壁量計算の機能では耐力壁の「自動配置機能」を、また構造図では「プレカット連携」や「伏図作成」機能を詳説。構造計算でも「荷重や軸力を3Dで確認できる」便利機能を素早い操作で紹介しました。

「ご紹介した機能以外にも様々な構造関連機能があります。ユーザーの皆様は、ぜひ構造関連のオプションをご検討ください!」。

意外と知らない?! 構造関連の便利機能(セミナー資料より)

【製品紹介(2)】ARCHITREND Modelio 2023 のご紹介

福井コンピュータアーキテクト 山本 義人

 最後に登壇したのは青柳と同部署で開発を行っている山本義人です。今回、山本は住宅プレゼンソフトARCHITREND Modelio(以下 Modelio)と4月アップデート予定の新機能の紹介を任されて初登場となりました。

 住宅営業向け住宅提案ツール Modelioは、住宅営業での初期プラン提案とプラン検討を素早く行うためのプレゼンツール。営業担当やコーディネーターが扱いやすいよう、簡単で早く、高品質な提案ができるよう設計しています。そう語りながらModelioを立ち上げた山本は操作しながら説明を進めます。間取入力だけで3Dモデルが立ち上がるサブモニタ。初めてでも直感的操作が可能な画面。そして、リアルタイムの採光・換気チェックや壁直下率チェック、3Dスケルトン表示機能等々アップデート内容まで、機能紹介を行いました。

 「様々な機能を持つModelioは、サポート付で月額1万円からリーズナブルにご利用いただけます。複数人向けのお得なプランもご用意しましたのでぜひご検討ください!」。

リアルタイム採光・換気チェックに対応(セミナー資料より)

【同時開催】FCAリノベーションコンテスト2022 オンライン表彰式

今回のA-Style Forum Vol.11では、FCAリノベーションコンテスト2022のオンライン表彰式が同時開催されました。総計120点に及ぶ応募作品の中から厳正なる審査の結果、株式会社雅匠 様(三重県)の「住み継ぐ家」が大賞を受賞。さらに優秀賞3作品など総計14作品の各賞受賞作を表彰しました。

※詳細は特設ページをご覧ください!
https://rcon.fukuicompu.co.jp/jyushou/

大賞受賞作品「住み継ぐ家」(株式会社雅匠 杉野正樹 様)

A-Styleフォーラム Vol.11(2023年2月17日)

■開催日時/2023年2月17日(金)
      13:30~16:30
■参加費/無料(事前申込制)
■開催方式/YouTube LIVE配信
■収録場所/東京・MONSTER STUDIO 乃木坂

■テーマ
2025年施行まであと2年
構造関連の準備は万全ですか?
今から始める「4号特例縮小」対策

【セミナー(1)】
株式会社M's構造設計 構造塾 佐藤 実 氏
「4号特例縮小で思わぬ罠!? ~必要となるリスク対策とは~」

【セミナー(2)】
在住ビジネス株式会社 橋爪 智幸 氏
「耐震設計のスキーム改革! ~0から始めるwallstat活用術~」

【製品紹介(1)】
「ARCHITREND ZERO:意外と知らない構造関連の便利機能」

【製品紹介(2)】
「ARCHITREND Modelio 2023 のご紹介」

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