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A-Styleフォーラム Vol.13(2024年2月16日)

A-Style Forum VOL.13開催!「法改正カウントダウン 建築業の次なる一手」

四号特例縮小の施行が迫る改正建築基準法、そして省エネ適合の義務化へ向かう建築物省エネ法改正の流れなど、住宅業界はいま大きな変革の波にさらされています。A-Style Forum Vol.13では、そんな時代の最先端にフォーカス。そこで活躍中の専門家3人をお招きし、さまざまな角度から対応へのヒントを提供していただきました。ここではその3つのセミナーと福井コンピュータアーキテクトによるARCHITREND ZEROテクニック紹介の抄録をお届けします。

【セミナー(1)】改正建築基準法・建築物省エネ法に関する最新動向

国土交通省 住宅局 杉原伸一氏

 最初に登壇したのは国土交通省住宅局の建築企画担当の参事官付課長補佐である杉原伸一氏。まさに建築基準法、建築物省エネ法の改正を実際に進めている側の方による、内容解説という贅沢なセミナーです。杉原氏は、令和7年4月施行予定の改正内容について3項目にまとめて説明していきました。一つ目は建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直しについて。4号特例縮小の背景やその改正前後の変化に関する解説でした。

 「都市計画区域等の区域外での建築確認審査の対象について、現行では木造建築物で2階以下かつ延べ面積500㎡以下のものは対象外ですが、改正後の対象外は構造によらず平屋かつ延べ面積200㎡以下の建築物(新3号建築物)だけとなり、その他の階数2で延べ面積200㎡以下の建物も建築確認申請が必要になります」。さらに杉原氏は改正に伴う提出図書等の合理化に触れ、旧4号建築物から新2号建築物に移行するもののうち、仕様規定の範囲で構造安全性を確認する建築物については、各階床伏図等の提出を求めず必要事項を仕様表等に記載する形を取ると語りました。

 続いて2つ目の「木造建築物の仕様の実況に応じた壁量基準等の見直し」、3つ目の「階数の高い木造建築物等の増加を踏まえた構造安全性の検証法の合理化」についても、前項同様に内容を詳説し、最新の動向も漏れなく紹介していきました。たとえば前者については、いわゆる「軽い屋根」「重い屋根」の区分によらず、建築物の荷重実態に応じた算定式による必要壁量の算定への見直しや、小径の算定方法についても同じく荷重実態に応じた算定式導入を解説。合わせて必要壁量や柱の小径、柱の負担可能な床面積を容易に算定できる設計支援ツールの整備についても具体的な情報提供を行いました。その後、建築物省エネ法についても詳細な制度解説を行ない、わずか40分ほどとは思えないほど豊富な情報が凝縮されたセミナーとなりました。

改正建築基準法・建築物省エネ法に関する最新動向(セミナー画面より)

【セミナー(2)】四号特例にまつわる建築トラブルへの備え

神崎法律事務所 神崎 哲氏

 続いては建築士資格を持つ弁護士である神崎哲氏による、4号特例縮小から多発が予想されるトラブルとその対策についての講演です。

 神崎氏はまず4号建築物に関する現行法規制をおさらいし、その上でこれらの規定の問題点を洗い出していきました。たとえば建築基準法の規定には、建築の技術的基準に関する規定である「実体規定」と建築確認や検査手続等の建築の手続きに関する規定「手続規定」があるが、4号建築物はその双方で「構造計算の免除」や「構造審査の省略」、「設計図書のうち構造図書の保存義務の免除」などといった特例的な取り扱いがあり、結果、多様な問題が生じていたことを指摘しました。

 そして、まず「実体規定」について、木造4号建築物の構造規定の問題点を取り上げました。すなわち、現行の構造規定の特に「仕様規定」について、それが技術的基準としても不十分かつ不合理な部分が多いことを指摘。現状の建築基準法は基準法が求める耐震性を充たす十分な技術的基準を設けておらず、木造4号建築物の構造規定、特に仕様規定は不十分だと語りました。

四号特例にまつわる建築トラブルへの備え(セミナー画面より)

 さらに「手続規定」については、4号建築物の「構造審査の省略」が建築確認として不適当な特例であると改めて強調。

 これらを原因とする複数の問題事例を紹介後、2025年施行の改正法でこうした問題が解決するか検討し、これらを踏まえた提言を行いました。

 「2025年施行予定の改正建築基準法で仕様規定を遵守しただけでは、構造安全性を確保できない可能性が極めて高く、安全性不足のトラブルに巻き込まれる危険性も増大しています。法改正により、法令の基準は最低限の基準としての意味合いを強めており、基準を下回れば危険なのはもちろん、上回っても安全の保証はありません。特に仕様規定の基準は、それを上回れば合格できる合格点ではなく、足切り点になってしまっています。仕様規定ルートで確認申請する場合も構造計算は必須と言うべきでしょう。2025年以降はぜひ構造計算を!とお勧めする次第です」。

LIVE配信の撮影風景

【セミナー(3)】法改正に備えるための設計・申請ポイント

ハウスプラス住宅保証株式会社 都出卓男氏

 三番目に登壇したのはハウスプラス住宅保証の都出卓男氏です。住宅性能評価や長期優良住宅を中心とする評価業務、また住宅瑕疵担保責任保険等に関わるビジネスを展開しているハウスプラス自身にとっても「法改正に備えるための設計・申請ポイント」というテーマは喫緊の課題の一つと言えます。今回、都出氏は省エネ関連の法改正の向かう先である「2030年のZEH水準省エネ義務化」への流れに基づいて、フィールドを木造軸組工法の住宅に絞った上で「ZEH水準住宅で105角の柱が使える境界線」について深く掘り下げてくださいました。

 講演の内容は大きく3つの項目に分けて語られました。都出氏はまず(1)「2024年の法改正等について」では、省エネ関係の法改正の今後の主なスケジュールを示し、そこからポイントとなる改正として、建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度や建築物再生可能エネルギー利用の促進区域制度、そして住宅関連税制とその補助事業を取り上げました。

 続く(2)「建築物省エネ法の改正について」では、まず2025年4月施行予定の省エネ基準適合義務の概要を紹介し、省エネ基準適合で求められる評価手法がどのようなものになるか分析。パソコン等で行う精緻な評価法の計算ルートと仕様で判断する仕様基準ルートを比べ、ZEH水準住宅への対応には計算ルートが望ましいと語ります。そして2030年のZEH 水準の省エネ義務化の可能性は高いものとして示しました。

 最後の(3)「建築基準法改正について」では2025年4月の改正における建築確認や検査、審査省略制度の対象範囲の見直しの解説で、提出図書類の合理化等にも触れていきました。さらに都出氏は「木造建築物の仕様状況に応じた壁量基準の見直し」を掘り下げ、荷重の実態に応じ算定式で柱小径の最小寸法や柱が負担可能な床面積が算定できると紹介。そして、早見表でZEH水準住宅で必要な柱小径が120である場合も柱材の樹種を変更することで105で収められると指摘し「120角の柱が必要か、105角の柱で対応できるのか」具体的な境界線が何処に引かれるのか解説していきました。

法改正に備えるための設計・申請ポイント(セミナー画面より)

【製品セミナー】来年度に備えてマスターしておくべきZERO操作テクニック

福井コンピュータアーキテクト(株)マーケティング推進課
田中信一(左)と小林美喜子(右)

 最後に登場したのは福井コンピュータアーキテクトのマーケティング推進課コンビ、田中信一と小林美喜子です。「このセミナー開催には理由がありまして、長年ZEROをお使いのユーザー様がSNSで“最近ドラフター機能を知った”と呟いておられるのを読み、まだまだ紹介しきれていない機能があるんだなと思いまして……」(小林)。「隠しているわけじゃないんですけどね。ZEROには目立たない便利機能がたくさんありますから」(田中)。

 というわけで、法改正に向けてマスターしておきたいARCHITREND ZEROの便利機能が、2人の軽快な掛け合いと共に実際の操作をお見せしながら紹介されました。特に木造壁量計算や外皮計算、その他の隠れた機能を中心に、ユーザーから聞かれることの多い疑問点にも操作しつつ細かく答えていきました。

来年度に備えてマスターしておくべきZERO操作テクニック(セミナー画面より)

福井コンピュータアーキテクト(株)営業推進課 市原照久(MC担当)

A-Styleフォーラム Vol.13(2024年2月16日)

■開催日時/2024年2月16日(金)
      13:30~16:30
■参加費/無料(事前申込制)
■開催方式/YouTube LIVE配信


■テーマ
四号特例縮小・省エネ適合義務化はすぐそこに!
法改正カウントダウン
建築業の次なる一手

【セミナー(1)】
国土交通省 住宅局
参事官(建築企画担当)付課長補佐
杉原伸一 氏
「改正建築基準法・建築物省エネ法に関する最新動向」

【セミナー(2)】
神崎法律事務所
弁護士・二級建築士 神崎 哲 氏
「四号特例にまつわる建築トラブルへの備え」

【セミナー(3)】
ハウスプラス住宅保証株式会社
西日本営業部長 都出卓男 氏
「法改正に備えるための設計・申請ポイント」

【製品セミナー】
福井コンピュータアーキテクト株式会社
「来年度に備えてマスターしておくべきZERO 操作テクニック」

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