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太田木材株式会社

女子力全開の設計&ビジュアルで
地場の小規模工務店をサポート

太田木材(福井県吉田郡)は、1987年創業の木材加工販売会社です。プレカット加工にもいち早く進出し、地場工務店を中心に多彩な建築資材を供給してきました。同社は昨年、女性による設計部門「WOOD PARTNER」を設立し、独自の工務店サポート事業を開始しました。その背景と狙いについて、専務取締役の太田貴司氏に伺います。

厳しい住宅市場を勝ち抜くために

設計部門設立の背景をご紹介ください

太田

設立のきっかけはリーマン・ショックです。7~8年前まで福井県の年間着工棟数は5,500~6,000棟でしたが、今では年3,800~4,000棟に激減しています。また、一方で県外のパワービルダーの参入も相次ぐなど、地場工務店はたいへん厳しい状況にあります。特に少人数の会社はショールームもなくデジタル化も遅れ、大手企業とは対等に闘えないのが現実です。当社の取引先はこうした小規模な会社が多いことから、何とかしてこの弱点をサポートできないかと考え、WOOD PARTNERを設立しました。地場工務店にどんどん仕事を取ってもらい、当社の木材を使ってもらおうというわけです。

小規模の会社を対象にするんですね?

太田

時代に逆行してますよね(笑)。中には大きい会社もありますが、古くからお付き合いがある所は、前述の通り1~2人でやっている小さい会社が多いんです。また、与信管理の点からも1社への比率はあまり大きくしたくありません。リスク分散ですね。

支援を意匠設計に特化させた狙いは?

太田

今までの家づくりは、立面・平面図という紙切れ2枚で話を決めて、後は大工さん任せというのがほとんどでした。施主も「どんな家が建つんだろう、楽しみだ」という感じだったんですね。しかし、今のお客様は違います。要望を反映させた設計が求められ、事前に「こうなります」と確認するのが当然だと考えている。それを怠れば「こんなはずじゃなかった」と言われかねません。だから仕事を取るには、施主の要望にきちんと応えた意匠設計と、分かりやすくインパクトのあるビジュアルが欠かせないのです。

長期優良住宅も対応しているのですか?

太田

実は工務店フォローの仕組みを構想していた当初、長期優良住宅の設計サポートも考えていました。ですがその後、長期優良住宅のグループ化への流れの中で、やはりニーズの高さという点で、家を建てる時に絶対に必要な意匠設計やプレゼンに力を入れるべきだと考えたのです。もちろん長期優良対応の仕組みはちゃんと用意してあるので、ニーズがあればいつでも対応できますよ。

地場工務店支援のための新たな仕掛け

WOOD PARTNERのサービスの流れをご紹介ください

太田

WOOD PARTNERでは“仕事の受け方”は無限というか、決まった形がありません。お客様との折衝からトータルに受ける場合もあれば、設計だけ、パースやウォークスルーだけの制作、また確認申請からお引き受けすることもあります。もちろん従来通り材木だけ販売するのもOKですよ。要は各社の業務スタイルや状況に応じて上手く使ってもらえればいいわけで、工務店さんには「つまみ食いしてくれ」と言っています(笑)。設計をお受けした場合は、ARCHITREND Zで平面立面を作りプランが決まったところで3D化。当社2階のショールームのTREND Arenaで3Dモデルやウォークスルーをご覧いただきます。ショールームは取引先の工務店に自由に使ってもらっています。

本社2階のショールームは地場工務店に開放し、TREND Arenaの3Dシミュレーションを使いプレゼンが行える。

それを木材販売に繋げるわけですね

太田

そうです。パースやウォークスルーは、それ単独の発注は別として、基本的に設計料込みの形でサービスします。その代わり最終的に当社が扱う資材を納めさせていただく、という形でお願いしています。モノを売ろうという姿勢が前面に出ると牛丼の価格戦争的になりかねませんから、そこは回避して“建つ前に見せる”ビジュアル等の提案力で差別化を図っています。また、この流れとは別に、設計事務所としてエンドユーザーから直接受ける設計業務も進めています。もっとも、それにはまずWOOD PARTNERの存在をエンドユーザーにアピールする必要があり、現在は地域への広報活動が中心です。

どのような広報活動を?

太田

やはり材木工場という場所は普通の方にとっては敷居が高い場所なので、まず来てもらい知ってもらい、親しんでもらうことを優先しています。もちろんコマーシャルは無しで、地域の方に親しんでいただけるイベントです。具体的には、WOOD PARTNERは女性が主体のチームなので、彼女らを中心に「時々、姫・女子会!」というイベントを定期的に企画、開催しています。「リフレクソロジーとハーブティ・ワンコイン体験」や「スイーツ会」等々、毎回地元中心に多くの人たちが集まり、なかなかの盛況ですよ。

最大の強化ポイントはビジュアル

女性主体のチームなのは何か理由が?

太田

住宅営業の経験がある私の持論なんですが、家づくりの話では、施主の奥様つまり女性の独壇場です。だからいかに女性の感性やインスピレーションに合った対応ができるかが大切です。女同士だから通じる会話や女同士だから聞きだせるニーズ、女性だからできる企画があるわけです。現在3名いる設計士は全員女性で、しかも30代2人に40代、そしてお客様窓口には50代の方もいます。施主の世代も多彩なので、それぞれに合った同世代の担当が必要ですからね。

WOOD PARTNERでは設計士も営業窓口も女性

工務店からの反響はありますか?

太田

福井県では初の試みだったので最初は食わず嫌いの所も多かったんですが、一度利用すればすぐメリットを理解してもらえましたね。実際に使ってくれた方からは「楽だ」って言われましたし、レスポンスも増えています。そこで、これまで年7~8件建てていた所には「楽」になった分12~13件に増やしてくれ、と言っています。そうやって新しい流れをどんどん太くしていき、将来的には既存事業と設計事務所関連の事業が対等になるくらいに育てていきたいと思っています。

その戦略の中でARCHITREND Zが果たす役割は?

「Z」の、特にビジュアルパワーは非常に重要です。良いプランでもビジュアルが劣っていたら勝ち残れません。十人中十人のお客様に選ばれるには、きれいに化粧して髪を調え衣装にも凝らなければダメですから、とにかくビジュアルとその見せ方については今後いっそう強化する必要があります。たとえばお客様へのプレゼンも、データをご自宅にお送りして、お客様ご自身のPCで好きな時に家づくりを楽しんでいただく、というのを目標にしています。もちろん打合せやプレゼン、営業活動も、たとえばiPad等を使ったよりスマートかつビジュアルなものにしていかなければダメでしょう。その意味でビジュアル面が強化されたARCHITREND Z Ver.8には、大いに期待しています。

※2012年発行のWind/fで掲載したものです。役職などは、取材当時のものです。

太田 貴司専務取締役

太田木材株式会社

所在地
福井県吉田郡
代表者
代表取締役 太田 博
開 設
1987年12月
事業内容
プレカットを中心とする木材の卸売・小売業

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