福登建設株式会社
住宅履歴情報の蓄積が工務店最大の武器になる
長期優良住宅への対応において、しばしば重要な課題となるのが「住宅履歴」の問題です。膨大な情報をどう整理し、どこでどのように管理すべきなのか。独自の手法で膨大な顧客情報を管理・蓄積し、広く活用している福登建設の清水榮一氏に伺います。
法制度とは関係なく常に最重要な課題
- 住宅履歴に関してどのようにお考えですか?
-
清水氏
長期優良住宅や瑕疵担保保険といった法や制度の枠組みの中で、住宅履歴に注目が集まっているようですが、おかしな話ではないでしょうか。こうした法制度があろうがなかろうが、自分たちが建てた家のデータは漏れなく残して管理すべきで、そうしなければ後で困ることになります。社歴の長い会社にとって、昔からそれは大きな課題でした。
- データを残さなければ困る、というのは?
-
清水氏
当社は私で三代目ですが、周辺には先代が建てた家も多く、お孫さん世代のお客様とのお付き合いもあります。40~50年前に建てた家の改築の話もきますから、昔の情報もすぐ必要になります。何を使ってどんな風に建てたのか、材料に幾ら払ったのか、いつどんな改修をしたのか……分からないと困ることばかり。データが無いでは済まされません。さらにこうした長いおつきあいが前提ですから、住まいの提案も30年後、40年後を踏まえて行います。お客様の収支の変化を考慮してローン計画を考え、増改築を依頼されれば孫の代の資産管理のことも考え、時にはあえて減築をご提案することもあります。そこまで踏み込んで相談に乗れるのが当社の特長で、それができるのも長年にわたるデータの蓄積があるから。つまり、データの蓄積は強力な武器なんですよ。
デジタルデータの蓄積が工務店の武器に
- では御社の住宅履歴管理はどのような形で?
-
清水氏
即座に出せるのは、デジタル化を始めた1996年以降の分です。紙の台帳も上のフロアいっぱいにありますが、古い物は昭和20年の空襲と昭和23年の大地震で一切焼けてしまい、残っているのは昭和38年以降の分に過ぎません。やはりデジタル化したものが、本当の意味で使えるデータということですね。データベースは顧客名を親フォルダにし、そこへ工事ごとにフォルダをぶら下げて、その中にあらゆる情報を入れていきます。図面や書類、工事写真、ファックスで届く手書き書類も直接データとして受信して、保存します。全体では顧客数はおよそ1,800件になりますね。顧客満足の観点からも、実務上も、顧客名主体で管理した方が運用しやすいんですよ。
- 非常に多岐にわたるデータを保存するんですね?
-
清水氏
引渡し後のデータだけでなく、工事が始まる段階、さらには契約した段階から情報を集めます。その段階のデータがなければ、お客様がどんな意図で建てたか分からないでしょう。また、実務レベルで言えば、後々一番必要になるのは「どこに幾ら払ったか」という情報なんですよ。本当に実務で活用できる情報は何なのか、住宅履歴情報の項目にとらわれずに考えるべきでしょう。実は「ARCHITREND Z」の履歴情報管理ツール「ARCHITREND Manager」は、当社のこのシステ厶を参考に作られています。当然、より強力で多機能ですから、当社も現在、この「ARCHITREND Manager」へのデータの移行を進めています。これが完成すれば無敵ですよ!
※2009年発行のWind/fで掲載したものです。役職などは、取材当時のものです。