株式会社 松本設計
中小工務店+設計事務所で中・大規模木造建築に挑め!
この4月、千葉県松戸市に完成した介護付有料老人ホーム「ときわ苑」は、国内最大級(延床面積3,987.60m2)の木造建築(2×4工法)の福祉施設として注目されています。成長が期待される中・大規模木造分野へいち早く進出し、同物件を企画設計した松本設計の松本会長に伺いました。
Zをフル活用し約4,000㎡の木造建築を
- 木造建築としては国内最大級だそうですね
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松本氏
約4,000㎡の木造建築は、国内には本物件を含め数棟しかありません。調整区域に新設するため、通常でも許認可が複雑であるうえ、東日本大震災の影響もあり、スケジュールは非常に厳しいプロジェクトでした。
- 設計上のポイントとなったのは?
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松本氏
2×4の木造耐火構造、しかも市場流通材を使いこれだけ大きなものを作ったのは、革新的だったと自負しています。屋根はトラス構造とし約15mスパンのトラスを工場で作って載せていくことで精度向上と作業効率化を図り、構造計算は2棟を構造的にエキスパンションで区切って個別計算しました。また、2棟を1つの建物として耐火構造としています。いずれも当社が蓄積してきたノウハウを生かしたもので、特殊な方法や材料は使っていません。
- スケジュールが厳しかったとのことですが?
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松本氏
着工が遅れたため施工期間は約半年しかなく、設計期間も工期もできるだけ短縮する必要がありました。トラス屋根の工夫などに加え、設計ではARCHITREND Zが威力を発揮しました。特に意匠入力から構造までデータが一貫し、修正変更しても不整合がないのは非常に効果的で……こういう大規模木造はZなしでは難しいでしょう。
- 構造計算もZで?
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松本氏
同業者や検査機関にも「そんな大きな物までZでできるの?」と聞かれますが、できるんです(笑)。多少の修正は必要でしたが、すぐ福井コンピュータが対応してくれ、問題なく使えました。新法や制度変更への素早い対応や業界トレンドの先取りなど、やはりZだからこそです。
500~1,000㎡規模なら中小工務店でも可能
- 今回、大規模木造に取り組んだ狙いは?
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松本氏
市場が縮小するなか、中・大規模木造分野に追風が吹き始めています。当社もこの方向へシフトしていく考えで、本物件もそのための取り組みの一つです。実は他社で鉄骨3~4階建ての計画で進んでいたのですが、コスト等の問題で頓挫し、替わって当社案が採用されました。タイミング良く追風が吹いたのと、減価償却が20年と短い木造のプランが、事業計画の目処が立てやすいと施主に気に入ってもらえたようです。
- 中・大規模木造は中小工務店でも可能でしょうか?
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松本氏
デイサービスやグループホームなど500~1,000㎡程度の建物なら、中小工務店も十分建てられます。ビルもの特有の設備や電気設計、耐火のディティール等のノウハウはアウトソースを使えばいいわけで。昨年も当社の設計で、地場工務店が820m2のグループホームを施工しましたよ。
- 設計者も興味をお持ちの方が多いようですね?
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松本氏
住宅主体の設計事務所にとっても可能性に溢れた新市場ですよ。福祉施設と言っても建物としてさほど特殊なものではないし、工務店と設計事務所が連携すれば充分作れます。問題になるのは大規模木造に関する情報の少なさで、これは業界全体で取り組むべき課題です。当社もこの分野で蓄積した技術情報を公開していますので、ぜひ情報発信サイト「大規模木造.com」(daikibo-mokuzo.com/)をご覧ください。
※2012年発行のWind/fで掲載したものです。役職などは、取材当時のものです。