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株式会社 松本設計

時代の先を行く戦略で、月100棟体制を!

東京都国立市の松本設計は、住宅設計に特化したアウトソーシングビジネスを展開する新タイプの設計事務所。木造2階建ての在来軸組工法からツーバイフォー、木造3階建てまで、多様な工法の戸建て住宅の設計~確認申請をトータルに引き受け、月産100棟規模の驚異的な設計~確認申請体制を確立しています。そんな同社では、2006年の建築基準法改正の影響もほとんどなく、むしろこれを追い風に果敢な展開を続けています。同社を率いる代表取締役松本照夫氏に、「勝ち残る」改正建基法対策についてうかがいました。

建築基準法改正が逆に追い風に

昨年の建築基準法改正の影響は?

松本

特に大きな影響はありませんでした。たしかに6月から7月にかけては、評価機関や確認審査機関など行政側とのやり取りで、書類上の問題など多少の障害が出ましたが、基本的に申請の中身については全く問題ありませんでした。実際、木造2階建てや木造3階建てを含めて、すぐにスムーズに申請を下ろすようになりましたし。他社差別化という点では、むしろ当社にとっては、建築基準法改正が逆に追い風になったともいえるでしょう。

なぜそれが可能だったのですか?

松本

当社はもともと構造設計事務所として発足した会社で、建築の「中身」に非常にこだわりがありました。そのため、何年も前から木造2階建てについても、どこにも「中身」の説明責任が果たせない、と言い続けていたんです。4号建物もちゃんと構造計算をして、設計者が責任を持つべきだ、と。ですからその後、外注設計事務所として多棟展開を始めてからも、建物が持つのか持たないのか、といった部分に大きなウェイトを置いていたんですね。そして、金物の計算や壁バランスの計算など、通常の意匠設計ではこなし難い構造検討についても先手を打って業務に取り入れ、数年がかりで所内の体制を整備していきました。結果的にこれが功を奏したわけです。

「中身」にこだわりながら多棟をこなす

その体制作りのポイントは?

松本

中国に作ったCADセンターと「ARCHI TREND Z」でしょうね。まず中国・大連に設立したCADセンターですが、ここには現在37名の中国人スタッフが勤務しています。職場はスカイプやWebカメラで日本側と結ばれており、中国側と日本側のスタッフが画面を見ながら打ち合わせできます。中国で作図し、日本側でチェックした上で製品として申請したり納図したりする形ですね。これによりコストを抑え、しかも「中身」にこだわりながら多棟をこなせるような体制になったわけです。

ARCHITREND Zがポイントとは?

松本

当社のいちばんの強みは、法改正などにより基準が厳しくなればなるほど、頑張ってこれにいち早く対応し、他社に先駆けて実務に取り入れていく点にあります。そのような戦略においては、ひんぱんに行われる新法や法改正など行政の指導に、常にリアルタイムで反映させてくれるARCHITREND Zは、無くてはならない存在です。業務のあらゆる側面で助けられていると強く感じますね。

具体的にはどのような点で?

松本

たとえば中国のCADセンターの運営やスタッフ教育の面でも、最新の法規や制度に対応したARCHITREND Zが大きな威力を発揮しています。ARCHITREND Zが自動で描いたり、チェックしたりしてくれるからこそ、中国人スタッフの教育期間を大きく短縮し、日々の作業も極限まで効率化できているといえます。汎用CADや他の専用CADでは、とても対応できなかったでしょうし、当社も今のような成長を遂げることは難しかったでしょう。

ARCHITREND Zで時代の先手を取る!

ツーバイフォー設計チームの皆さん

今後はどのような展開をお考えですか?

松本

今年は、法改正関連でも瑕疵保証に関する供託・保険加入義務化や200年住宅の住宅長期利用促進法など、大きな動きがあります。弊社もこの流れに乗って、5月から性能評価のサポートセンターの運営を開始します。確認申請と性能評価を一本化してARCHITREND Zで処理し、一緒に申請していこうというわけです。事実、ここ1年ほどの間に、性能評価付き住宅は急速に増え続けている実感があります。おそらく今後は確認申請自体は最低レベルの基準となり、建物のグレードや安全性は、民間機関の評価を受けたものが標準になっていくのではないでしょうか。

4号特例見直しへの対応については?

松本

見直しは延期になりましたが、対応は進めていますよ。もちろん求められれば私たちが伏図を描くこともできますが、実際には各プレカット工場ごとにやり方が違うので、こちらですべて描けばいいというものではありません。そこで当社では、ARCHITREND ZのCEDXM連携を使い、各プレカット工場とのデータ連携を進めていきます。当社で作図した図面データをCEDXMでプレカット工場に送り、プレカット図に落としたものを描いてもらい、それを当社で構造計算に流すというやり方で、もう試験的にデータを流すことを始めています。……とにかく法改正などの動きを見越して早め早めに手を打っていくことが、当社の戦略の基本。そして、それを可能にしているのがARCHITREND Zなのです。

在来木造設計チームの皆さん

業界の今後をどのように展望しますか?

松本

私も30年以上建築業界にいますが、過去にもいろいろ法改正があり、多くの企業が淘汰されてきたのを見てきました。しかし、個人的には今回の「これ」が、最終的に設計事務所が生き残れるか否かを決める、最終淘汰だと考えています。設計事務所にとっては、本当に厳しい時代です。だからこそ時代の先を見つめ、時代に求められるものを確実に提供していかなければならない、と考えています。

ご同業へのメッセージをお願いします

松本

時代のニーズに応え、法改正へ対応していくという点においては、基本的にはARCHITREND Zが全部サポートしてくれています。つまり、ARCHITREND Zユーザーであれば、棟数や規模の違いはあっても、当社と同じように時代の先手を取って対応していくことができるのです。そういう認識を持って、なんとか一緒にこの厳しい時代を生き残っていきたいですね。そうして、ARCHITREND Zで設計することを、日本の住宅建築業界の新しい標準としていきましょう!

※2008年発行のWind/fで掲載したものです。役職などは、取材当時のものです。