「見る」から「入り込む」へ!
VRプレゼンで時代の一歩先を行く
栃木県宇都宮市に本社を置く薄井工務店は、創業70年を超える歴史を持つ地場の工務店。長年蓄積した技術とノウハウを生かした、どこまでもお客様の要望に応える家づくりに定評があります。それだけに同社はお客様に設計意図を分かりやすく正確に伝えるプレゼンツールとして、いち早くARCHITREND VRを導入、活用を開始しています。すでに大きな成果を上げつつある同社の取組みについて、社長の薄井氏と設計部長の丸山氏に伺います。
「お客様に伝える」大切さと難しさ
- 非常に多彩な住宅をお作りですね
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薄井氏
当社は注文住宅が中心なんですが、他の工務店さんに「できない」と断られたような、こだわりの強いお客様がとても多いんですよ。
- 無理難題を言われてしまう?
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薄井氏
法的・物理的に無理なものはお断りしますが、そうでなければ収まりのギリギリのラインで頑張ってしまう(笑)。ただ、そうした工夫を正しく伝えて理解してもらうのはとても難しいのです。特に高さを含む「空間」を伝えるのは本当に難しく、お客様が「分かった」と言っても後になって「やはり違う」となることもしばしばです。だから「見せ方」「伝え方」はいろいろ工夫してきました。
- どのような「見せ方」を?
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薄井氏
基本は、ベースとなるプランを手描きし、それをARCHITREND ZEROで3Dに立上げて図面化。必要に応じCGパースや手描きパース、建築模型等も作ってご覧に入れるようにしていました。
- パースだけでなく建築模型も?
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丸山氏
特に「空間」を伝えるには、立体的に見せられる模型が効果的です。近年は申込みいただいたお施主様に建築模型を作ってきましたが、模型も万能ではありません。どうしても「伝わらない」まま後でトラブルになってしまうケースもありました。
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薄井氏
模型はコストもかかるし保管場所にも困ります。もっと空間を的確に分かりやすく伝えられる、インパクトの強い見せ方はないか……と悩んでいる時に出会ったのがARCHITREND VRでした。
- VR初体験の感想をお聞かせください
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丸山氏
会議室でデモしてもらったんですが、とにかく驚きました。3Dモデルが3Dで見られるといわれても、実際に体験するまでは具体的にイメージできてなくて、パースの延長線上くらいだろうとか思っていたんです。だからその予想をはるかに超えたVR世界に触れ、「ここまでできるようになったんだ!」という驚きが一番に来ました。
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薄井氏
私も同じです。「まさかあんなに!」って。とにかくあの凄さは体験しなければ分からないし逆に体験すれば一目瞭然で分かると思いますね。
- 何がそれほど衝撃だったのですか
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丸山氏
自分が作った仮想現実の世界を「見る」のでなく「入り込む」という感覚です。ふだんPC画面で見ている空間へ入れるんだ!という驚きとともに、そこに「居る」気分がすごくリアルなんです。住宅プレゼンの手法は一変すると確信しましたね。
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薄井氏
言い方は悪いけど、まるで洗脳された感じでしたね。ARCHITRENDZEROで作った仮想空間なのに驚くほど現実的で…あんな体験は他にありません。しかもVRで体験したプランは強烈に記憶に残ります。実際、半年以上前に体験した数分間のデモの家の間取りを今でも覚えているほどで……当然、すぐ導入を決めました。
- お施主様もV Rに関心が高いのでしょうか?
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薄井氏
奥様など最初は恥ずかしがって遠慮されるのですが、ご主人に「凄いからきみもやってみたら」といわれて、一度やるともう夢中です。VR空間の和室に案内すると、座り込んだり横になって寝転がる方までいます。それくらい入り込んでしまうんです。
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丸山氏
完全に自分のマイホームに入る感覚ですよね。待ち遠しく思っていただいて、実際に入ればすごく感動していただいて……。
- 「きちんと伝える」という課題については?
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薄井氏
伝わっている実感があります。「高さ」についても自分のアイレベルで体感できるので、棚の高さや窓の高さがどうか、手が届くかすぐに分かる。そこで、今はプランができたらまずVRでひと回りしてもらい、気になる箇所も順にチェックしていただきます。私たちは図面と赤ペンを持って「奥さん、その右手の窓の高さはどうですか?」なんて聞いて「少し高いかな」といわれたら図面にチェックを入れて……。そうやってひと回りすれば問題点の洗いだしも即座に完了します。
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丸山氏
お客様の安心感が全然違いますね。平面図での打合せではお客様は「イメージできないけど……」と不安を感じながら進むことも多く、不安や不満も蓄積されがちですが、VRなら一目瞭然で「分かりました、お願いします」となる。打合せがスムーズだし、お互いの誤解も解消できます。作る側の私たちにとっても大きな安心感に繋がりますね。
- 今後もVRを軸に提案を?
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薄井氏
そうですね。今後はウチ独自のモデルハウス的なプランを、デザインから中の小物、外構まで何パターンかしっかり作り込み、いつでもVRでご覧いただけるようにしておく計画です。VRは他にもいろいろな生かし方が考えられますし、会社として積極的に活用していくつもりですよ。
※2017年発行のARCHITREND Magazine Vol.3で掲載したものです。役職などは、取材当時のものです。