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鈴久名建設株式会社

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GLOOBE Architect/ConstructionでBIM活用、鳶土工専門工事会社のノウハウを見える化する

北海道札幌市に本社を置く鈴久名建設は、この地で90余年の歴史を積み重ねてきた専門工事会社である。元々は木造建築を主体に建築業を展開していたが、現在は鳶土工工事分野に特化した形で札幌を中心に道内各地へ展開している。業界では「CADすら不要」と言われることもある鳶土工の仕事だが、この分野で豊富な実績を持ち大手ゼネコンとの長期にわたる取引関係を持つ鈴久名建設では、地域の先陣を切って2000年頃にCADを導入。さらに2017年にはJ-BIM施工図CAD、そしてGLOOBE ArchitectにGLOOBE Constructionを導入し、独自のBIM活用により大きな成果を上げつつある。そのユニークな活用法について、同社専務取締役の鈴久名徹氏にお話を伺った。

「CADもBIMも要らない業界」だからこそ

 「電話と“腕”さえあればCADは要らないし、当然BIMも必要ない。いまでもそんな風に言われることがある鳶の仕事ですが、当社では20年ほど前、ある現場での出来事をきっかけにCADを導入しました」。そう語る鈴久名徹氏は、鈴久名建設のBIM戦略を主導する専務取締役。自らJ-BIM施工図CADやGLOOBEを繰りBIM活用に取り組むプレイングマネージャーである。同氏によれば、CAD導入のきっかけとなったのは、当時札幌では珍しかった積層工法による高層マンションの建設現場だった。積層工法だけにまずPCで柱や梁を組む必要があるが、各社とも経験がないなか同社に声がかかったのである。
 「PC組立て担当に指名され、元請けのゼネコンからCADデータを渡されたのですが、当時のウチには肝心のCADがありませんでした。データを開くことさえできず、とても悔しい思いをしました」。これからはもうCADがなければ仕事にならない。そう考えた鈴久名氏は2D CADを導入。短期間で操作に慣れると、仮設図や外部足場までCADで描き始め、やがて元請けから作図を頼まれるほどになっていったと言う。
 「もちろん新築物件の図面は元請けから提供されますが、改修工事までは手が回らず、当社が図面を描く機会が増えていきました。そして、これを通じて出会ったのが3Dの世界です」。当時、鈴久名氏が使っていた2D CADは簡易3D機能も備えており、これを試した鈴久名氏はたちまち3Dの世界に魅了される。そして、Web経由でJ-BIM施工図CADの存在を知ったのである。
 「初めてBIMを知りBIMツールに触れて、単なる3Dよりずっと面白い!と感じました。これを使えば3Dで描けるし、数量も出せるから効率化できる、と考えたのです」。その勢いのまま導入を決めた鈴久名氏だったが、施工図作りを専門とするBIMツールであるJ-BIM施工図CADにとって、足場作りは言わば専門外。鈴久名氏自身の不慣れもあって、いまひとつ使いきれなかったのである。「仕事の忙しさもあって、そこからしばらく手つかずに……それでも何とかして足場の制作にBIMを活用したい、と思い続けていました。そして、2017年になって導入したのがGLOOBE(現 GLOOBE Architect)。ここから当社のBIMは一気に進み始めました」。

電話と“腕”さえあればCADもBIMも必要ない、そんな風に言われてしまう鳶の仕事だからこそ

現場の職人たちのためのBIM

 GLOOBE Architectは、日本の建築設計に最適化された国産のBIM設計ツール。自由度が高く使いやすいデザイン機能と日本仕様の豊富な建材データを備え、基本設計から実施設計、建築基準法に沿った法規チェック機能も備えている。「このGLOOBE Architectを使うことで柱・梁等が自由に描けるようになり、モデル作りが大きくスピードアップしました。当社のBIM活用の流れにおいて、このことは非常に重要な転機になりました」と鈴久名氏は語る。実際、GLOOBE Architectの活用により、鈴久名氏が長年抱いていた業務課題に関して、BIMを活かすことができるようになったのである。それは、高所作業を主業とする鳶職ならではの重要課題──すなわち「現場の安全管理」である。
 「私たちが目指しているBIMとは、第一にあくまで現場の職人のためのBIMなんです。なんと言っても当社は専門工事業の会社なので、重要なのは現場であり、そこで働く職人たちです。そして、そんな当社にとって最も重要な課題は、やはり“現場の安全”になるのです」。だからこそBIMを活用して、職人たちに対してより質の高い安全を提供したいと言うのである。では、具体的にどのようにBIMを活用するのかと言えば、現場立ち上げの早いタイミングで危険箇所の確認と職人たちへの周知徹底である。
「簡単に言えば、現場が立ち上がる前に、そこにどんな危険箇所があり、安全のため注意すべきはどういう点かを確認して、GLOOBE Architect等で作ったBIMモデルを見せ、ビジュアルに伝えて具体的に危険個所をイメージしてもらおうというわけです」。たとえば──と鈴久名氏は実際の現場を例に説明してくれた。
 「北海道の現場では、気温が氷点下に下がるとしばしば生コンクリートが硬化しなくなります。そうなっては困るので、そこへ雪が入らないよう一時的に屋根をかけたりするんです」。つまり、元の計画にない屋根を作る必要があるわけだ。そこで、ここで働く職人がどんな処に注意すべきか? どの場所で事故が発生しやすいのか? 具体的に伝えておかなければならない。GLOOBE Architectを使って手早く現場の建築モデルを制作。ここから危険個所のビジュアライゼーションに仕上げて職人に見せながら説明していくのである。「ここで“高所落下の可能性がありますよ!”“ここに手を置くと挟まれやすいですよ!”と、現場に合わせて危険周知のビジュアルを作るわけです。とにかく職人さんにイメージが伝われば良いのでスピーディに分かりやすく見せることが最優先。だからGLOOBE Architectが威力を発揮するわけです」。

建物と足場、作業所等に加え、作業員やコンクリート圧送車まで配置

建物モデルと足場計画

足場の掛け方やその危険個所を分かりやすくビジュアル化

棚足場の作業手順をビジュアル化

GLOOBE ConstructionでBIM活用を加速

このように、鈴久名建設ではゼネコンや設計事務所のそれとは大きく異なる、独特のBIM活用法を推進してきた。もちろん数量算出等の機能も使用しているが、やはり現在も現場で危険個所をイメージさせたり、現場立ち上げ前の安全ミーティングで使うビジュアル資料作りが中心となっていた。しかし、2020年、新たにGLOOBE Constructionを導入したことによって同社のBIM活用フィールドは大きく拡大していく。2020年11月に発売されたこのGLOOBE Constructionは、特に仮設・土工計画を支援し、施工現場の安全と効率を追求する現場のためのBIMツールだった。まさに鈴久名建設の業務スタイルにフィットしたBIMソフトなのである。
「GLOOBE Constructionが凄いのは、建物モデルから仮設計画まで一日で描きあげられることです。足場も大ざっぱにですが一気に描けるし、数量も概算で出せる。実際、これを活用することで、当社はゼネコンに対する強力な提案力を獲得できました」。前述の通り、専門工事会社として元請けの指示で動く同社が、その元請けに対する提案力を獲得したとはどういうことだろうか? 鈴久名氏によれば、それは特に改修工事の分野で威力を発揮すると言う。
 「新規物件はあるていど段取りのための期間が用意されており、仮設計画等も元請けのゼネコンがそれなりに作り込んできてくれます。しかし、改修工事はあまり時間がないまま進めるケースが多く、きちんと工事計画を立てる間もなく一気にやってしまおう、ということになりがちなのです」。しかし、中には特殊な工事もあり、そうした場合は時間のないなか「どう進めれば良いのか」と専門家のノウハウが求められることも少なくない。そこで鈴久名建設とGLOOBE Constructionの出番となるわけだ。
「たとえば、前年の冬にやった案件ですが、札幌の某ビルの改修工事がありました。この建物の一番上に看板が付いているのですが、ここに雪が積もって凍った塊が落ちてきて危険なので、電熱器を付けて凍らないようにしようというのです」。そのためには、地上70mの高さにある看板部に足場を組む必要があるが、実際にどんなやり方で組んでいけば良いのか──ゼネコンには具体的なアイデアがなかったのである。

内部足場(棚足場)のモデル

BIMが専門工事会社の提案力を向上させる

 「高さ70mの場所で行う工事だけに、人やモノの落下は絶対に許されません。そこで職人たちの意見も聞きながら、看板ごとネットで包んだ中に足場を組み、屋上側に重し代わりの足場を組む……という手法を考えました」。そして、この内容をBIMでビジュアルに見せながら元請けに提案しようと考えたのだ。詳細な工事手順など言葉ではなかなか伝え難いが、こうして見える化することで専門外の人にも分かりやすく伝えられる。まさに、BIMによって専門工事会社の提案力が大きく向上するのである。
 「見える化のやり方ですが、まずGLOOBE Architectで建物モデルを作ります。そして、足場関連の工事計画等を作る場合は、そのデータをGLOOBE Constructionへ移して描いていきます。J-BIM施工図CADを含め、ツールは各現場の必要に応じて使い分けていますが、前述した注意喚起のマンガ等も含め仕上はGLOOBE Constructionで行うことが多いですね」。
 GLOOBE Constructionを導入してから、まだわずか7カ月余に過ぎないが、すでにこうしたビジュアライゼーション主体のBIM活用手法は同社の多くの現場へ浸透し始めた。用途も徐々に広がって新しいニーズさえ生み出しつつあるという。「当初、私がBIMで作った足場等を元請けさんにお見せすると、“あれっ!”とか“BIMやってるの?!”と驚かれたものですが、最近はその効果を理解して下さる方も出てきました」。そう言って、鈴久名氏は幾つかのBIM活用現場の事例を紹介してくれた。

GLOOBEによる作業風景

専門工事会社の付加価値として

 「先日、あるビル改修工事現場で玄関エントランス上の鉄骨トラス梁にカラスが巣を作ったので、足場を掛けて取り除きたいと相談を受けたのです」。元請けの担当者から話を聞いた鈴久名氏はその場でノートPCを開き、GLOOBE Constructionを立ち上げて素早く足場を描いて「こうやったらどうでしょう?」と一つの提案を見せたのである。「元請けの方はそのビジュアルをそのまま発注元の処へ持っていき“こういう風にやったらどうですか?”と提案したそうです」。こうなると一種の現場コンサルテーションと言うべきだろう。そして、こうした事例が同社ではどんどん増えているのである。
 「進行中の現場に北海道ボールパークの建設工事現場があります。2023年開業予定の日本ハムファイターズの新本拠地ですね。当社は中心となる新球場の現場で足場を掛けたんですが、いただいた図面が複雑すぎてすごく分かり難かったんですよ」。新球場は建築面積5万平米。地下1階の掘り込み式フィールドを起点とする地上4階建てで、2枚構造の屋根の1枚が可動式という凝った設計になっている。ここへ安全に足場を掛けるため、この複雑な構造を職人に理解させる必要があった。「そこでBIMモデルを作り細かい処まで職人に見せたところ、“あ、こうなるんだ!”と一発で理解してくれました。こういう時、BIMは本当に大きな威力を発揮しますね」。さらに同社はこの現場のコンクリート打設も担当しており、そこでもコンクリート圧送車の配置やブーム稼働範囲の検討など、さまざまな形でBIMモデルの活用を進めている。
 「BIMが設計事務所から元請ゼネコンへ。そして、専門工事会社へと広がり、いよいよ実際に現場で施工する職人が利用する時代に入ってきた──そんな実感があります。当社もBIMを大きな付加価値と捉え、GLOOBEを一本追加し人材育成も推進中です。今後はさらに活用を広げたいですね」

スピーディーに分かりやすく伝えて提案力を強化、BIM活用が工事会社の大きな付加価値となっていく

鈴久名 徹専務取締役/一級建築士

鈴久名建設株式会社

■代表者/代表取締役 鈴久名 健
■本社所在地/北海道札幌市
■創業/1924年 設立/1962年
■事業内容/鳶土工専門工事会社
■BIM導入時期/2017年
■使用ツール/
・GLOOBE Architect
・GLOOBE Construction
・J-BIM施工図CAD

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