ARCHITREND 省エネナビで省エネ性能を可視化。外張断熱のメリットをアピールし効果的な他社差別化を実現
群馬県太田市の和奏建設(わかなけんせつ)は、注文住宅を主力とする地場工務店である。他社に先んじて外張断熱工法をいち早く標準化して省エネ住宅を追求し、さらに制震システムも標準装備を目指すなど、時代を先取るセンスと技術の高さには定評がある。そんな同社の展開を支える基盤の一つがARCHITREND ZEROだ。独自の活用法の詳細について、同社の新井氏と前原氏に伺った。
やっと時代が追いついてきた
- 外張断熱の導入は早かったそうですね
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新井氏
実は私自身が若い頃から高気密高断熱に興味があり、個人的に情報を集めたりしていたんです。そこで20年ほど前に偶然出会ったのが外張断熱工法でした。そして「いつかは高気密・高断熱の家が主流になる」と確信。これを会社の戦略として取り入れてもらいました。もっとも会社で導入した当初は、この工法はまだほとんど知られておらず、社内も半信半疑の人が少なくありませんでした。
- 理解を得るのが大変だったのでは?
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新井氏
それでも外張断熱でやり続けていると、徐々にお客様が付いてきます。当社では引渡し後に御施主様へインタビューやアンケートを行っているのですが、外張断熱で建てると決まって「冬暖かく夏涼しい」という感想が返って来るわけです。それが積み重なるうち、皆が前向きに取り組むようになりました。近年は業界でも省エネ住宅がトレンドとなり、お客様自身ネットで情報を集め、外張断熱に強い工務店として当社を探してきてくれます。やっと時代が追いついてきた感じですね。
- いろいろと工夫もされたのでは?
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新井氏
そうですね。前述の通り、実際に建てた方には「外張断熱で冬暖かい」とか「夏涼しい」という言葉はいただきますが、たとえば初めて展示場に来場した方に、外張断熱の良さを伝えようとしても具体的に示せるものは数値しかありません。しかし、「UA値が幾つでC値が幾つで……」なんて数字を並べても、クルマの燃費程度にも響きません。一般のお客様に良さはなかなか伝わらないわけです。
そこで4年ほど前からARCHITREND ZERO(以下 ZERO)のオプションプログラム「ARCHITREND 省エネナビ」を使い始めました。
※ARCHITREND 省エネナビ:意匠データから外皮計算を行い、その結果から一次エネルギー消費量を算出。BELSやZEH評価をシームレスに確認できるプログラム。断熱仕様や設備性能の違いによるイニシャル・ランニングコストを加味した総合的なバランス提案を、グラフ等のビジュアルを駆使して見やすく・分りやすく行える。
いち早く「省エネナビ」を導入・活用
- 4年前ということは、省エネナビが発売されてわりとすぐに使い始めたのですね?
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新井氏
省エネ性能の説明義務化は決まっていましたから。ならば早く準備して全部できるようにしておいた方が良い、と考えました。
- 省エネナビの現在の運用法は?
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新井氏
営業から図面作成の依頼が入ると、設計積算課ではその段階からZEROを使い始めます。で、図面が出来上がったら省エネナビを立ち上げて、その家の省エネ性能を確認するわけです。図面と合わせて省エネに関する資料も作成・提出し、営業担当者はお客様にこれらをお見せしながら説明していきます。特に近年は、多くのお客様が、省エネ関係の取り組みに興味を持って下さるようになりました。そこで、今では途中で設計変更が発生する度に省エネナビを使って、毎回、変更に合わせた省エネ性能資料を提出しています。
- 導入効果はありましたか
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新井氏
まず、建物の省エネ性能をグラフ等のビジュアルで分りやすく見せられるので、お客様にとって非常に分かりやすいのは間違いありません。私も契約時の説明に立ち会うことがありますが、お客様に「ウチの建物ってこんなに良いものだったんですね!」と喜ばれることもしばしばです。また、当社の設計担当にとっても、早い段階から省エネナビを使って各種の数値を把握できることは大きいですね。たとえば、今話題の「こどもみらい住宅支援事業」を利用する上で、問題になりそうな微妙な数値等もいち早く把握できるので「ここを強化しておこう」と先手を打つことができる。申請時になって「数値が足りない!」なんてミスも無くなるわけです。
- 実際の運用でお手間だったことは?
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前原氏
当社の仕様では断熱材が、基礎・壁・屋根でそれぞれ選べるので、どれを選んで組み合わせるかによってUA値などの数値が変わってきます。そのため初期設定時は数+種類を登録しなければならないので、多少手間どりましたが、それさえ済ませてしまえば、後はそれぞれタグを選んでいく形で進められます。なので、操作は難しくないし手間もそれほどかかりません。実際、ZEROを使っているスタッフ全員が、すぐに使えるようになりました。
ARCHITREND ZEROの進化と共に
- ZERO自体はいつからお使いですか
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前原氏
導入したのはZEROの前身であるARCHITREND Zの頃だったと聞いています。
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新井氏
たぶん23~24年前ですね。それまでは当社はグループに属していたので社内に設計部門はなく、図面作成はグループ本部に依頼していました。しかし、プラン変更のたび本部へ図面変更を頼んでいたらどうしても時間がかかります。全体的にもっとスピーディに進めたいということで、CADスタッフを育ててZEROを導入することになりました。
- 効率化のためZEROを選んだんですね
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前原氏
そうですね。私が入社した時は、平面図と立面図くらいしか使われていませんでしたが……やがて積算を連動させるようになると、どんどんZEROの活用機会が増えていきました。質の高いカラーパースに外皮計算、もちろん省エネナビも……ZEROの機能が拡大するのに合わせて活用機会が広がっていった感じです。
- ご自身がCADに触れたのは?
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前原氏
建築3次元CAD自体、入社して初めて触れました。それがZEROだったんですが、平面図を作成していても3次元が立ち上がって「凄いなあ!」と(笑)。注文住宅は分譲住宅等と違い、実際に建てるまでこの世にないものですから御施主様はなかなか具体的なイメージがしにくく、時には私たちの考えと御施主様が想像する家でギャップが生じかねません。だからこそ、誰にでも目で見て理解してもらえるカラーパースはとても重要です。
- 設計スタッフは何名体制ですか?
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新井氏
CADを専門に使っているのは5名ですが、うち1名は勉強中の新人なので実質4名ですね。年間供給棟数は50棟前後ですが、図面は契約までに何度も作ることになるので、4人で年間150〜160件くらい作っているんじゃないかな。しかも作業は分担せず、それぞれ物件ごとに作図からパース、積算、外皮計算等まで個々に担当し、基本的には全員が一通りのことができるようにしています。
- 貴社の今後の展開についてご紹介下さい
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新井氏
外断熱についてはZEH基準を上回るHEAT20のG2レベル前後を実現したので、続いて太陽光発電や制震設備の標準化を押し進めます。ZEROの活用機会も増えそうですね。
取材:2022年7月