4号特例縮小など対応できて当り前!800㎡超の大規模木造もZEROを駆使し構造設計まで行う技術者社長の誇り
福井市の福登建設は、注文住宅から店舗、事務所、工場まで、多様な建築物の設計・施工をトータルで行う建築会社である。木造、鉄骨、RC造にも対応する技術力に定評があり、自らARCHITREND ZEROを駆使して構造設計まで行ない、大規模木造建築や独自の遮断熱工法によるZEH住宅など、業界の流れを先取りし続けている。そんな同社の代表 清水榮一氏にお話を伺った。
多彩な工法を駆使して「来た球を打つ」
──やはり木造注文住宅が得意分野ですか
建築には木造とか鉄骨とかRCとかいろいろな建築がありますが、当社はどの工法にも特段のしがらみはありません。また、住宅に強いとか非住宅はやらないといったこだわりもないんです。むしろ「来た球を打つ」というか、お客様がお望みの建築物を、その規模とか特徴に合せて最も効率が良い工法で作ります。そうやって選択肢の幅を広げないと、お客様の希望の幅を狭めかねません。
──「希望の幅を狭めてしまう」とは?
例えば「3,000㎡の工場を建てたい」と言われたとしましょう。本当は鉄骨で建てた方が早く、安くできるかもしれない。なのにこちらが「木造しかできません」という対応だったら、お客様の希望の幅を狭め、損させかねません。だから何にでも対応できる技術基盤を作り、依頼に合せてその都度、最適化した提案を行いたいと考えているのです。
──現状はどんな物件が多くなっていますか
昨今の資材高騰の影響もあって、今は木造が流行中です。実際、建物の大小に関わらずほぼ100%木造建築を提案している状況です。背景には鉄資材価格の高騰がありますが、RCやS造に比べ、木造は軽く建てられるという点も大きい。耐震性能を高める上で建物自体の重量を抑えることも重要ですから。時節がら設備投資物件……工場や店舗、施設等の注文が多いのですが、コストを睨んだ提案が必要なので「木造でできるなら木造でやりますか?」という話になりがちなのです。
──大規模木造はお得意だと聞きましたが?
多いですね。設備投資物件を中心に400㎡超の建物もしばしばで、800㎡から900~1,000㎡のご相談も多々あります。もちろんその構造設計もARCHITREND ZERO(以下ZERO)を使って自分でやっていますよ。
──4号特例縮小も問題なさそうですね?
当然です。当り前のことを当り前にやってきたが、国交省は単に「今後は当り前に審査しますよ」と言ってるだけでしょう。
4号特例縮小は「当り前のことを当り前に」
──不安を感じる設計者も多いようですが
先ほど申し上げた通り「当り前のこと」なのですから、本当は「できない方がおかしいんですよ」と言うしかありません。ですから、今になって「どうしたら良いんでしょうか?」と聞かれても、私としてはなかなか答えに困ってしまいます。確かにかっこいいデザインの使いやすい家は、お客様にとって素晴らしい家でしょうが、その大前提として「倒れない家」や「安全性の高い家」というものがあるわけで、それを担保できないというのは、そもそもおかしな話なんですよ。
──しかし、これまでは4号特例が……
確かにこれまで、4号建築物は確認申請上の法適合の審査を免除されていました。でも、その理由は「そんな小さな家の構造くらい、いちいち言われなくても設計者が責任を持て」と言うことです。「ちゃんとやってくれるなら、私たちはいちいち確認しませんよ」という法の立て付けだったんですね。ところが誤解した一部の人たちが「構造規定に準拠しなくてもいいんだ」と取り、それにならって次の世代の人たちもその次もそう思ってしまった。人間、楽な方へ行きたくなるのは分かりますが……今回そのツケが回ってきたわけです。
──社長が楽な方へ行かなかったのは?
当社の地元である福井は雪の多い土地です。そして、雪がたくさん降ると家の和室の襖が動かなくなっていました。雪の荷重で梁がたわんで下の階の鴨居を押し、その鴨居が下がって戸が開かなくなったわけです。福井の施主は優しいので「大雪だから仕方ない」と諦める方も多いですが、設計レベルで考えたら構造の問題ですよね。開けにくいどころか完全に開かなくなることも多いので……。私は若い頃にこの問題を知って「これはどうなんだろう?」「ちゃんと構造を見るべきなのでは?」と考えるようになりました。そして、これが私の家づくりの原点になったのです。
──そうした疑問を持ち続けたから、業界をリードしていくことができたんですね
ええ。そこで重要な役割を果たすのがARCHITREND ZERO(以下ZERO)です。これが無かったら今の私も無いでしょうね。
ZEROが無かったら今の私は無い
──社長にとってZEROは何なのでしょうか?
例えば建築の構造計算等に関わる力学的な根拠や法関連の判断、あるいは建築自体の機能性やデザインまで含め、作業中に発生する「これはどうなんだ?」という疑問に、ZEROは素早く答えをくれます。「ここはどうかな?」と問えば「これでどうでしょう?」と見せてくれる。その答えを見て「やっぱりこれは違う」とか「これでいくか」と判断する。これができるのはZEROだけです。……だから作業中はずっと画面と喋ってますね(笑)。
──CGやパース等についてはいかがですか
ZEROは大抵まずCGとか構造パース等が注目されますが、設計者にとってその凄さは3Dビジュアルだけじゃありません。例えば断面図で矩計り等がぱっとできてくる等の何気ない機能も、縦方向の設計をちゃんとしようという設計者にとってはとても重要です。例えばサッシ窓の窓枠の上面に天井の石膏ボードを納めて天井付けの窓にしたい時、天井に付く窓枠の額縁が20mmでサッシ取り付け懐を35mm等に設定できますね。そこでさらに窓の高さを変えた場合、枠尻にちゃんとボードを差せるかどうか?ZEROなら矩計りを起こし即座にそれをジャッジできるわけです。
──もしZEROが無く確認できなかったら?
大工に「天井で納まるようにしてください」と言って任せるしかありません。もし大工がそれを忘れたら、彼らは自分たちがやりやすいようにしかやりませんからね……。明かり取り等の意匠的な窓ならともかく、例えば排煙窓だったら問題が発生しかねません。そういった全てを含む問題を判断できるか?と言ったら、ZEROでなければ無理でしょう。
──ポイントはナレッジとしてのZEROの質の高さと充実、そして、早さでしょうか
そうですね。設計して現場して見積りして営業して……私など常に時間に追われています。今日は2時間で確認申請の図面を仕上げる!という時に、きっちりついてきてくれるCADじゃないと駄目なんです。実際、木造800㎡の構造図の時は6時間で構造原案を作り、計算し最適化していきました。800㎡の建物でそんなことができるのはZERO以外ありません。他社の2次元CADみたいに線を引くだけならCADなど使わずマジックで書きます。ZEROを使うのは納まりや高さ等を全部見ながら書けるから。それらの関係を精確に確認しながら書けるからなんですよ。
取材:2022年11月