Architect Style Lab建築事例サイト スタラボ

新着記事

佐藤工業株式会社/株式会社トクミツ建築企画

GLOOBE Architect & GLOOBE Constructionで現場によるモデル作りから挑む、初めての施工BIM

秋田県横手市の赤坂総合公園内で進む横手体育館建設工事は、約1万3900㎡に及ぶ総合体育館施設の建設プロジェクトである。2026年3月に竣工予定のこの施設は、イベント・スポーツを介する市民の交流拠点として、また災害時の避難施設として市民に期待されているが、同時に別の点からも注目を集めている。同現場ではGLOOBE Architectで独自にBIMモデルを作成。これとGLOOBE Constructionを連携させて、施工計画や土工事計画を立案するなど施工BIMの活用を推進しているのである。同工事作業所の工事部長としてこの取り組みを主導する佐藤工業の伊藤浩司氏と宮坂伊織氏、協力業者のトクミツ建築企画 徳光慎太郎氏、熊谷天志氏に話を伺った。

横手体育館(第1アリーナ)

横手体育館(第1アリーナ)

(左から)トクミツ建築企画 徳光慎太郎氏 熊谷天志氏 佐藤工業 伊藤浩司氏 宮坂伊織氏

(左から)トクミツ建築企画 徳光慎太郎氏 熊谷天志氏 佐藤工業 伊藤浩司氏 宮坂伊織氏

施工BIM導入を目指し続けた「次の機会」

 「私が最初に施工現場でBIMを使いたいと思ったのは2015年頃。秋田県由利本荘市のナイスアリーナ(由利本荘アリーナ)の建設工事を行っている時のことです」。そう語るのは、横手体育館建設工事の現場作業所で現場を束ねる伊藤浩司氏である。伊藤氏はこの横手体育館建設工事の施工担当企業である4社JV(佐藤工業、創和建設、大和組、丸茂組)の幹事企業 佐藤工業の工事部長として、これまで数々の建設現場で所長を担当してきた。ナイスアリーナはそんな現場の一つだったのである。「当時、秋田では現場へのBIM普及が遅れており、ナイスアリーナの現場でもBIM導入を検討したものの、モデリング等の外注に大きなコストがかかるため断念しました。ただ、後で大いに後悔することになりました」。同物件は2018年に竣工したが、ダクトや電気設備など意匠・構造ともに複雑な取り合いが多く必要で、確認・修正に大変な手間を取られたのである。「あの時は外注費用を高く感じましたが、あの手間を削減できるなら施工BIMを導入すべきでした。次の機会があれば、ぜひ挑戦したいと決めたのです」。

 その機会はなかなか訪れなかったが、その間に伊藤氏は業務の傍らBIM情報の収集に務め、担当した多くの現場で幅広くBIMの活用手法を試していった。佐藤工業でBIMソフトとして採用していた海外製3D CAD製品を用いて独自にBIMモデルを作らせ、たとえば意匠的な分野で活用してみることもした。「ある小学校の建設現場でしたが、職員室や校長室、図書室等の部屋は、そこの職員さんがロッカーや机、コピー機等の備品を配置したレイアウトを見たがります。そして、この備品レイアウトが決まらないとコンセント位置等も決め難いのです」。レイアウトを決めないまま建物を作ると“ここにコンセントが欲しかった”“スイッチの場所はこちらに”等のクレームが生まれかねない。だが、2Dの平面詳細図では十分にイメージできない人も多いため「これをBIMモデルで確認することで、建築の素人であるお客様にも分かりやすく伝えられるようにしたのです」(伊藤氏)。

 このようにさまざまな形でBIMを試し情報収集を進める中で、伊藤氏は多様なBIMソフトに触れていった。そして、そんな中で出会ったのが、GLOOBE Constructionの前身 J-BIM施工図CADだった。「いいな!とすぐ思いました。これならモデリングしたBIMモデルで納まりを検討し、躯体図から2Dの施工図を作り出せるのですからこのまま現場で使えます。施工BIMを実現できるなと」。やがて、待ちに待った「次の機会」がやってきた。2023年、横手体育館建設工事を受注したのである。そして、その時すでにJ-BIM施工図CADも、より強力なGLOOBE Constructionへ生まれ変わっていた。

鉄骨納まりの検討(※一部の調整作業に他社製品を使用)

鉄骨納まりの検討(※一部の調整作業に他社製品を使用)

鉄骨キャットウォーク

鉄骨キャットウォーク

建築モデルのない現場で施工BIMを

 秋田県横手市で建設中の横手体育館は、完成時はバスケットボールコート3面と最大5,000人を収容する第1アリーナ、さらにバスケットボールコート1面を備えた第2アリーナを擁する、地上二階建て鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)の建物となる。この総合体育館建設プロジェクトの受注を知った伊藤氏は、内容を知るとすぐに同現場への施工BIM導入を決めていた。

 「この現場を施工BIM挑戦の舞台に選んだのは、ここが複雑な納まりが多数発生しそうな体育館建築だったからです。たとえば第1アリーナの屋根は張弦梁構造で斜め柱や丸柱等を多用し観客席やバックヤードも複雑で、簡単に設計通りには納まりそうもないと予想しました」。バックヤードでは天井の中に配管ダクトを通すため、平面図に“ダクトが上・配管が下”あるいは“電気が一番下”等と順番が書かれているが、現場ではその通りでは納まらないケースが発生する。実際に工事するサブコンは2D図面を3D CADで立体に起こし直して調整。手間と時間をかけて立体上で納め直して現場に臨むのだ。

 「ならばBIMで最初から立体に起こしてしまえば、配管ダクトに限らずいろんなものを効率的に決められる……と踏んだのです」。まさにそれは意匠・構造・施工でBIMデータをトータルに活用しようというフルBIMの発想だったが、その実現には問題があった。この現場には、そもそもモデルデータが無かったのである。

 「受注が決まってすぐ、建物を設計した設計事務所に訊きました。“構造のモデルがありますか?”と」。答えは「ありません」。当然、建築モデルも無い。つまり、この現場にBIMを導入するなら、現場側で一からBIMモデルを用意するしかなかった。そこで伊藤氏が声をかけたのが、秋田県内で施工図作成実績No.1の実績を持つプロ集団・トクミツ建築企画である。同社は佐藤工業の協力業者であり、BIM業務についても早くから取り組んでいたのである。

 「当社がBIM業務に取り組み始めたのは約8年前です」。代表取締役の徳光慎太郎氏はそう語る。「それ以前から施工図作成をお手伝いしていた現場から、BIM業務を依頼される機会が徐々に出てきました。そこで将来こうした依頼が増えることを予想し、早めに進めておこうと考えたのです」。そう語る徳光氏の指揮のもと、同社はいち早く海外製BIMソフト2製品を導入し、急ピッチでBIM研究を進めていた。そんなトクミツ建築企画にとって横手体育館建設工事への参加は願ってもないBIM実践のチャンスだったが、そのためには同社自身もこの使用経験のないBIMソフトを新規導入し、すぐにこれを実務でフル活用することを求められたのである。

GLOOBEによる配管検討(※一部の調整作業に他社製品を使用)

GLOOBEによる配管検討(※一部の調整作業に他社製品を使用)

現場配管納まり

現場配管納まり

施工BIMを行う現場にとって最適な選択肢

 伊藤氏に施工BIM導入という大きな狙いがまずあったことは前述した通りである。そのためJ‐BIM施工図CADの後継のGLOOBE Constructionにも大きな魅力を感じていた。「海外製BIMソフトも施工BIM的に使えなくはありませんが、数量を拾う等の作業もいちいち複雑で……できなくはないが手間がかかるのです。そうなるとやはり、GLOOBE Constructionならではの施工用機能の数々が魅力的に見えてくるのです」。そしてもう一点、伊藤氏が重視したのが設計BIMとのデータ互換性だ。設計BIMで作ったBIMモデルデータを施工BIMに取り込んで工事現場で活用しようというのだから、両者のデータ互換性が重要になってくるのは当然だろう。

 「2Dデータでも海外製2D CADの図面データをDXF変換してJw_cadで開こうとすると、文字化けしたり縮尺が変わったりレイヤーがおかしくなることがあります。読み込めはするが、さまざまなトラブルが発生しがちなんですね。これを避けてやりとりをスムーズに進めるには、同じメーカー製の設計/施工BIMソフトを併用するのが一番でしょう。たとえばGLOOBE ArchitectとGLOOBE Constructionのようにね」。こうして横手体育館現場へのGLOOBE Construction導入が決まり、トクミツ建築企画へ同社が未対応だったGLOOBE ArchitectによるBIMモデルの作成が発注されたのである。

 「今後どのBIMソフトが主流になっていくか?手探り状態でしたから、当社にとっても新しい選択肢としてGLOOBE Architectに触れられることは大きなチャンスだ、と思いました」と徳光氏は語る。だが、同社のスタッフは初めて触れるGLOOBE Architectの操作を習得し、すぐに実務でこれを使う必要があるわけで。これはスタッフにとって大きなチャレンジとなる。実際にGLOOBE Architectでの作業を担当した同社テクニカルチーフの熊谷天志氏は言う。

 「当社には以前からさまざまなBIMソフトがありましたが、私はあまり使う機会がなく、モデル作りも今回のGLOOBE Architectが初めてでした。なので、実作業も含め福井コンピュータアーキテクトのサポートにはいろいろ助けてもらいました。この辺りはさすが国産BIMソフトならではの強みでしょう」と熊谷氏は笑う。

GLOOBEを活用して打合せを行う

GLOOBEを活用して打合せを行う

 ともあれ届いた2D図面データを元に、熊谷氏はスタッフと2人で分担しながらモデリングを開始した。「最初のモデルは図面通りに作りましたが、“納まらない”箇所が30箇所ほども出てきました。だから次のステップでは佐藤工業とBIMデータを共有して議論しながら、これを一つ一つ解決していったのです」。熊谷氏はここでBIMの威力をあらためて痛感したと言う。「平面図で見ていたら気付けない、それこそ平面、立面、断面に詳細図まで統合してようやく見つけられるような問題点も、BIMなら一発で見つかる。実に効果的でやりやすかったですね」。

 こうしたやり取りと修正を約3カ月間重ねた後、GLOOBE Architectによるモデルは完成。出来上がったモデルデータは早速、佐藤工業側に納品された。受け取ったのは熊谷氏とやりとりを行っていた現場工務主任の宮坂伊織氏だ。

 「仕上がった建築モデルをそのままGLOOBEConstructionで読み込んで変換。施工BIMのモデルとしてデータも加えた上で、これをいろいろ活用していきました。たとえば仮設計画や土工事計画、数量積算。叩き台を伊藤部長が作ってくれたので、私はGLOOBE Constructionを使ってこれに肉付けしていく形で、実際の計画として細かく配置していきました」。宮坂氏によると、この仮設計画作りは通常の半分程度の時間で仕上がった。この優れた効率化が確認されると、GLOOBE Constructionの活用は急速に拡がっていった。実はひと足早くGLOOBEConstructionに触れた伊藤氏が、「使える」と判断した機能を次々ピックアップ。叩き台を作り活用法を指導するなどして、現場での活用を強力にバックアップしていたのである。

GLOOBEで数量拾い

GLOOBEで数量拾い

BIMモデルがあればすぐ建物が作れる世界に!

 「たとえば工区ごとのコンクリート量や足場の数量、仮設関連の数量などモデルから拾い出して積算したのも、大きな効率化に繋がったと思います。また、ドローンを用いた現地の点群データをBIMモデルに反映させ一次測量の手間を省くことも試みました。測り残し等によるやり直しも避けられましたね」。こう語る伊藤氏の指示により、現場事務所にはGLOOBE ConstructionとGLOOBE Architectが用意された。自然と多くの若手スタッフが自らこれを操作し、各種の数量積算等を行うようになったし、ミャンマー出身の派遣スタッフも、トクミツ建築企画から届いたBIMデータを元に、GLOOBEから施工図をタイムリーに切り出していった。……現場はすでに内装仕上げが始まり屋根もまもなく葺き終わる。バックヤードはほぼ完成し、本格的に第1アリーナ・第2アリーナの仕上げにかかる段階だ。

 このような光景を満足気に眺めながら、伊藤氏は「GLOOBE Construction導入による施工BIMの展開は、この現場にとってメリットしかなかった」と断言する。「何年後かわかりませんがそう遠くない将来、BIMモデルさえ作ってもらえば、手間や時間を大きく削減して施工を進められる時代がきっとやって来ます。若い人は絶対、取り組んでおいた方がいいですよ」。

外国人スタッフもGLOOBEで作業

外国人スタッフもGLOOBEで作業

(取材:2025年10月)

 

意匠・構造ともに複雑な取り合いが多数発生する建築では、モデル作成など外注コストが発生してでも現場にBIMを導入した(伊藤浩司 氏)
CADといえばJw_cadだった私が、いまではGLOOBEユーザー。国産BIMソフトだからこそ使いこなせた部分はありますね(宮坂伊織 氏)
BIMを使うとお客様との合意形成がとてもスムーズです。施工の納まりでも意匠的な問題でも見る人の理解度が全く違う(徳光慎太郎 氏)
初めてのBIMモデル作りは、担当2人での共同作業になりました。とにかくスムーズかつスピーディ。これもGLOOBEの強みですね(熊谷天志 氏)
BIMモデルさえあれば、現場の手間や時間を大きく削減できる──そう遠くない将来、そんな時代がきっとやって来ます(伊藤浩司 氏)