GLOOBE Architect & GLOOBE Constructionで 設計BIMと施工BIMを結び、着実に進む総合BIMへの道

1955年創立の日本建設は、首都圏中心に日本全国へ展開する実力派ゼネコンである。マンションやオフィスビル、各種商業施設に医療・介護施設まで幅広い建築物の企画・設計・施工にメンテナンスやリニューアルまで幅広く手がけている。無借金経営など堅固な財務基盤を活かして展開する経営スタイルは、お客様の信用を第一に、一途に品質を追求する姿勢を貫いている。その真面目さ故にお客様から「シカクイカイシャ」とあだ名されるほどだが、そんな「シカクイカイシャ」が近年、急ピッチでBIM化を推進。特にGLOOBE導入を機に、設計・施工両分野で急激な進化を遂げつつある。そこで今回、設計・施工両分野のBIMに関係する皆様にお集まりいただき、それぞれの取り組みについて伺ってみた。


「BIMとは何なのか?」からのスタート
「当社のBIMへの取組みが始まった一つのきっかけは、2013年10月のこと。この日、私は全社へ向けてBIMに関する話をしました」。そう語るのは同社東京本社で情報システム部の部長を務める佐野洋氏である。佐野氏によれば当時はまだ同社の社員の多くが「BIMって何?」という時代であり、佐野氏の話も「BIMとはどのようなものか」という内容で「これからBIMが建築業界をどう変えていくか」を示そうというものだったと言う。このメッセージをきっかけに多くの社員がBIMに興味を持ち、社内の各所で議論が活発に交わされるようになったのである。そして、建築業界全体の機運も徐々に高まるなか「乗り遅れるわけにはいかない」という思いが社員たちの背中を押した。社内での議論の焦点は「どのBIMソフトを選び、どこへ導入するか?」に集まっていったのである。
「実はこのBIMの社内プレゼンを行う数年前から企画段階でのBIM活用を念頭に3Dモデリングに優れた他社ソフトを導入し、設計部門で試験的に運用していました」。そう語る佐野氏はBIMも基本設計と実施設計できちんとステージを分けて進める必要があると考えており、当然、BIMソフトについてもステージごとに専用ソフトを使うべきだ、と主張していた。当時、実際にこの他社製3Dモデラーを用いていた、東京支店設計部長の塚越亮介氏は以下のように語っている。 「当時の私は主に企画を担当していたので、1年ほどこのソフトを使いました。立体フレームですぐ3Dモデルができ可視化のアプローチがしやすかったんです」(塚越氏)。しかし、その運用は長続きしなかった。BIMソフトとして捉えるとすぐにも積算や施工BIMとの連携を考える必要があり、そうなると機能的に物足りず発展性も不足していた。結果、徐々に使用機会が減っていったという。──こうしていったんは休眠しかけたBIMへの道を再起動したのが佐野氏の社内プレゼンだったと言える。そして、佐野氏の指揮のもと再びBIMソフトの選定が始まった。候補となったのは、BIMソフトとしては有名な海外2製品。そしてGLOOBEだった。海外での実績を持つ海外2製品はともかく、当時はまだ実績も多いとはいえなかったGLOOBEが、なぜ候補に選ばれたのか?佐野氏に語っていただこう。
「一つには日本と海外との建築文化の違いですね。同じBIMソフトでも、海外製品は建築に対するアプローチが全く違います。実際、海外BIMソフトに触るとどれも使い難くて仕方がない……何で操作がこんなにもどかしいんだ!と叫びたくなるほどでした。同様に、日本で建築を学んだ社員は、どうしても海外ソフトの操作に違和感を感じてしまうことが多いのです。その点、国産のGLOOBEならごく自然に使えるのはもちろん、覚えやすさや敷居の低さも上でした」(佐野氏)。こうして1年余の検討期間を経て、同社はGLOOBE導入を決めたのである。

GLOOBE Architectによる設計BIMの成果物 「内観パース」

GLOOBE Architectによる設計BIMの成果物 「クリップ断面図」
GLOOBEでBIM設計にチャレンジ
当時はGLOOBE Construction登場前で、意匠設計用のGLOOBE(現 GLOOBE Architect)だけだった。そもそも施工BIMという言葉さえなかった時代である。紆余曲折の末に導入されたGLOOBEもまず設計部門で使うことになった。
「各地の支店にも配れるように試験的に6本ほど入れました。東京支店が3本、各支店に1本ずつでしたが、買ったからにはやらないわけにはいきません(笑)。とにかく確認申請の図面までなんとか書き上げようと、GLOOBEで1~2年挑戦したんです」(塚越氏)。対象として選ばれたのは、比較的小規模なマンションや事務所ビル。これらのプランニングをGLOOBEで行い3Dモデルを作り、そこから6割程度の図面を切り出し仕上げようというのである。
「初めてのBIMだったのでサポートセンターにもいろいろ協力を仰ぎながら、なんとか確認申請を出す所まで漕ぎ着けたものの、やはり限界というか……全部をGLOOBEで申請図として仕上げるのは難しくて。2D CADで修正したり追加で描き足したり、書き出して描き加えたりして一度ギリギリまで詰めたのですが、当時としてはここら辺が限界なのかなという結論でした」(塚越氏)。結局、その時の設計BIMチャレンジはそれが限界で、積算連携にはたどり着けぬまま終わった。同様に構造連携もはかばかしい成果は上がらず、断念せざるを得なかった。──だが、もちろん塚越氏がGLOOBE活用そのものまで断念してしまったわけではない。
「正直いってその後は、一種のチェックツールやプレゼンツールとして使うことが増えていったのも否定できません。ただ、あの時チャレンジが失敗に終わったのは、やはりBIMに特化した人材を作れなかったことが一番大きかった、と思っています」(塚越氏)。当時塚越氏らは設計部の一員として、通常の企画設計業務を進めながらサブ的にBIM設計を担当していた。通常業務が忙しくなればやはりそちらが優先され、BIM設計は慢性的にマンパワーが不足していた。
「とにかくそのような状況でも、私たちはGLOOBEを使い続け、操作スピードはどんどん向上していきました。今では若手は計画図くらいパパッとすぐ描きあげられるし、法規チェックも一瞬で完了します。プランをパースやモデルで可視化し、お客様とのやり取りはスピーディかつズレなく進められるようになっています」(塚越氏)。──つまり、時間はかかったが、設計部ではGLOOBEを核とする設計BIMのノウハウを少しずつ蓄積・進化してきたのである。そしていま、BIM確認申請本格化を前に、彼らはBIM設計へ新たな一歩を踏み出そうとしている。

GLOOBE Constructionによる施工BIMの成果物 「足場モデル」

GLOOBE Constructionによる施工BIMの成果物「躯体モデル」
施工図を糸口に現場へ施工BIMを普及
「私が東京支店に転勤してきたのは3年前のことです。もともとは大阪支店で現場IT化を担当していたんです」と語るのは、建築本部技術推進部でIT・BIM担当の課長代理を務める酒井徹哉氏である。実は、大阪時代の同氏は現場IT化の取り組みの中でBIMソフトに触れる機会があったと言う。「それで東京へ来て、新しい上司から“次は何をする?”と問われた時、すでに現場ITの普及もある程度進んでいたため、次はやっぱりBIMだ!と思い浮かんだのです。そして、私は施工出身で意匠のことは分からないし、どうせなら“BIMで施工に役立つものを作りたい!”と考えたのです」。東京に来るなりそう訴える酒井氏に応えたのが佐野氏だった。酒井氏と同じく施工BIMへの思いを温めていた佐野氏は、発売されたばかりのGLOOBE Constructionを既に導入していた。「そこで施工BIMの研究を進めるためにも、GLOOBE Constructionを試す必要があり、そこで社内屈指のBIMソフトのエキスパートに声をかけました」。それが、後に酒井氏のもと、技術推進部でIT・BIMを専門的に担当することになる網中怜也氏だった。
「東京支店ではずっと海外BIMソフトを触っていたんですが、どれも施工には不向きな意匠寄りの製品でした。なので施工BIMとして現場で使おうとしても、パースや3Dに立ち上げた施工状況などビジュアル的なものになってしまうのです」(網中氏)。施工BIMをやるからには、やはり現場が「いいね!」と言ってくれるものでなければ、普及させるのは難しい。そのことに気付いていた網中氏は、現場に支持される施工BIMについて考え続けており、そんな時に出会ったのがGLOOBE Constructionだった。
「例えば仮設計画も足場もちゃんと出せるし、海外製BIMソフトを触っていた私にとってはとにかく使いやすいBIMソフトでした。これなら施工BIMもじっくり検討できます」(網中氏)。そこで網中氏らは現場業務の中でBIM活用を定着させる糸口を求め議論を重ねていった。「私が注目したのは施工図です。現場で必要な施工図の叩き台を施工BIMで作り、タイミングよく現場へ提供できれば、皆に使ってもらえるのではないか、と。定着すれば、施工図の外注費用も抑えられます」(網中氏)。こうして2025年には総計5つの実物件現場において、GLOOBE Constructionによる施工図制作を中心とした施工BIM運用の検証が実施されたのである。

GLOOBE Constructionによる施工BIMの成果「掘削時モデル」

GLOOBE Constructionによる施工BIMの成果「基礎コン打設図」
設計・施工のコラボレーションでフルBIMも
「実際に作成した図面は現場により異なりますが、例えば都内のRC造5階建の現場では、杭伏図に基礎伏図、上階躯体図、階段躯体図、屋上伏図など計12枚を作りました。図面の提供速度についても概ね好評でしたよ」(網中氏)。実際、作図時間は一からJw_cadで書いた場合と比べ約30%も削減されたという。また、独自の工夫として、省力化のため設計図面とHELIOS(※HELIOS:BIM対応の建築数量積算·見積書作成システム)データからBIMモデルを作り総チェックをかけ施工図に仕上げる手法も開発された。
「弊社の場合、設計施工の案件は全体の3割程度。残り7割の施工単独案件のBIM化は大きな課題です。その点、設計が当社でなくとも積算は必ず行うので、HELIOSデータが作られる場合は非常に多い。施工単独受注の場合でも、これで施工BIMがやれるわけです」(酒井氏)。このような結果を踏まえ、酒井氏らは日本建設のトップにプレゼンテーションを行って施工BIMの全国展開を認められたのである。
一方では設計部の取組みも長足の進化を遂げていた。新人時代からGLOOBE Architectを使い続け、いまや部随一の遣い手となった田中悠氏は語る。
「入社直後はパースがメインでしたが、すぐにGLOOBE Architectで図面を描き始めました。初めて確認申請で使ったのは3年前。平立断に建具表、求積図関係をほぼGLOOBEで描き、加筆修正もGLOOBEの2Dで行ったんです。その翌年も別件でBIMで確認申請図を作成しましたが、その時はチーム設計機能で皆で役割分担して天空や日影も作りました」。BIM確認申請の準備も整いつつあるのだ──このように急激な進化を続ける日本建設の設計BIM・施工BIMについて、最後に塚越氏と酒井氏に語っていただいた。
「昨年、技術推進部ができBIM専任部署が生まれたのがすごく大きくて、取組みは全社的に加速しています。施工部門では、前述の通り施工BIMの全国展開計画が始動しました。3年で各支店に下部の内容をマスターした人材を1名以上配置する計画で、この担当者は、基本的な施工図作成と点群活用、また統合BIMモデルによる干渉チェック等もマスターした人材です。さらに2032~33年には全現場でBIMデータを様々な形で活用していくことが目標となります。また、今年はフルBIMモデルを作ってみようと、設計部とのコラボレーションも1案件準備を進めています」(酒井氏)。
「施工分野の完全BIM化への移行に先駆けて、設計部門としては設計施工案件のBIM化を急いでいます。設計施工案件のBIM設計がまだできてないので、これがいちばんの目標となります。直近ではもちろんBIM確認申請への対応ですが、BIMデータ審査開始前の2028年度中に普通にBIM確認申請できるようにします。そして、構造連携はもちろん電気設備の主要部も取り込み、2029年頃には総合図も作りたいですね」(塚越氏)。

点群データの活用

統合モデル
(取材:2026年6月)



