耐震性能は「差別化」となるのか価格競争に陥らない自社ブランディングとは

A-Styleフォーラム東京 スペシャルセミナー

耐震性能は“差別化”となるのか?
~価格競争に陥らない自社ブランディングとは~をテーマに
全国29会場を結び、A-Styleフォーラムを開催

2019年9月10日、A-Styleフォーラム第2弾となる「A-Styleフォーラム東京」が開催されました。今回は「耐震性能は“差別化”となるのか?」をテーマに、「車いすの一級建築士」こと阿部一雄氏(阿部建設株式会社 代表取締役)、構造ブロックや直下率を用いた構造計画の専門家 村上淳史氏(村上木構造デザイン室 代表)、倒壊解析シミュレーション「wallstat」を開発した中川貴文氏(京都大学 准教授)が講演しました。イベントは渋谷のメイン会場から全国28会場へLIVE配信され、リアルタイム投票システムで全参加者の質問を受け付けるなど全会場が一体化。大変な盛り上がりとなりました。当日のメイン会場の模様をレポートします。

前回の倍以上となる全国29会場が一体化

「皆さん、ようこそいらっしゃいました。ただいまより“A-Styleフォーラム東京”を開催いたします!」。午後1時の時報と同時に司会者の力強い宣言が響きました。東京・渋谷駅からほど近い「渋谷ソラスタ」4階のコンファレンスルームで、参加者たちの大きな拍手が起りました。この「A-Styleフォーラム東京」は、前回の好評を受けて大きく規模を拡大。このメイン会場から全国28会場へ同時配信され、さらにスマートフォンによるリアルタイム投票システムにより全会場が一体化します。徐々に参加者の興奮が高まるなか、まず福井コンピュータアーキーテクト(以下 FCA)社長の佐藤浩一が登壇します。

満員のメイン会場 東京・渋谷ソラスタコンファレンス


「皆さんこんにちは。本日はお忙しいなか、多数のご来場を賜り、まことにありがとうございます」。会場の参加者に向かって一礼した佐藤社長は「挨拶代わりに」、今回のテーマにも関わる耐震性と省エネ改正法案、さらに住宅省エネ基準適合義務化や4号特例廃止延長に関わる動向などの最新情報の解説から、これらに基づく ARCHITREND の開発方針や「その先」の取組みまで、盛り沢山の内容を歯切れよく語っていきました。
「本日は3名の先生方をお招きし、貴重なお話を伺います。しかも、最新のリアルタイム投票システムにより、本会場はもちろん全国の配信先の皆さまにも先生方への質問投稿や投票に参加いただけます。ぜひ積極的に活用し、有意義な一日としていただければ幸いです」

第1部セミナー
「基本価値×感性価値から広がるブランディング思考」

阿部建設株式会社 代表取締役社長 阿部一雄氏

「皆さんこんにちは。名古屋で工務店をしている阿部です。今日は工務店の戦略について突っ込んだ所を公開します。どうぞお楽しみに!」。笑顔で語り始めたのは、車いすの一級建築士 阿部一雄氏です。車いすの建築家を主人公にしたコミック『パーフェクトワールド』のモデルとしても知られる阿部氏は、創業100年を超える老舗工務店の5代目社長。オートバイレースの事故で車いす生活を余儀なくされながらバリアフリーの家づくりで人気を集め、会社は独自のブランディング戦略で成長を続けています。

今回の講演は阿部建設の根本をなすブランディング戦略の変遷を追いながら、その背景と狙いを詳説していこうという内容でした。2000年代は住宅性能表示制度や建築基準法改正を背景に、性能重視で住宅の基本価値の向上を志向。耐震性能に加え制震性能の重要性に着目して住宅の「基本価値」を高いレベルで標準化。これを差別化ポイントにブランディング化しましたが、こうした基本価値はいまやどこでも取り組んでいます。明確な差別化には、基本価値に加え「かっこよさ」や「心地よさ」など感性価値を加えたブランディングが欠かせません。

「われわれ工務店はもう一度、原点に立ち返って“そのお客様の求めるものを作る”ことに注力すべきでしょう。基本価値を前提に、お客様の言葉一つ一つに耳を傾けながら作っていく。それが感性価値の完成形ではないか、と考えています」

第2部セミナー
「明日から使える設計のポイント」
直下率、構造ブロックを用いた構造計画のメリット

村上木構造デザイン室 代表 村上淳史氏

「こんにちは、村上です。おなじみの方は“村上なら、また直下率の話だろう”とお思いでしょうが……残念ながら直下率の話です(笑)」。ユーモアたっぷりに話し始めたのは、村上木構造デザイン室の村上淳史氏です。木造専門の構造設計家として知られる村上氏は早くから床の不陸事故調査等に携わってきました。さらに伏図のルール化にも取組み「構造的に合理的な伏図の手順」を追求。研究成果はARCHITREND ZEROの建物チェック機能にも活かされています。

そんな村上氏の講演は、構造ブロックの基本から直下率による構造計画の基本解説、さらには設計段階から構造計画を行うメリットを豊富な図版と具体例で解説するなど、実践的かつ密度の濃い内容となりました。

「東日本大震災でマグニチュード9、熊本地震で震度7が2回。いまやどんな地震が来ても不思議ではありません。品確法の耐震基準など“倒れさえしなければ良い”という最低限の基準でしょう」。しかし、今は地震後も住み続けられる家が求められる時代。4号特例の問題も含め、しっかり対応できるかどうかは個々の設計者次第なのだ、と村上氏は続けます。「構造ブロックと直下率で構造検討して設計できていれば、伏図はプレカット工場に任せてほぼ問題ありません。設計者はその分、より良い設計の追求に時間を割くことができるでしょう」

第3部 「耐震基準+アルファの見える化」

京都大学 生存圏研究所 生活圏構造機能分野
准教授 中川貴文氏

「皆さんこんにちは、京都大学の中川です。今日のテーマは『耐震性能は“差別化”になるのか?』ですが、耐震性能を示すための壁量計算や構造計算は、言葉や数値ではなかなか伝えにくいのが現実です。そこでこのプラスアルファを見える化することで差別化を実現できるのでは――というのが今回の私の提案です」。

研究者らしい落ちついた口調で語り始めたのは、京都大学 生存圏研究所の准教授 中川貴文氏です。中川氏といえば、無償ながら高性能な倒壊解析シミュレーションソフト「wallstat」の開発者。このwallstatは、パソコン上で木造住宅の解析モデルに地震動を与え、その損傷・倒壊過程を精確にアニメーション化できる「見える化」ソフトとして話題を呼び、2017年にはARCHITREND ZEROとの連携も実現しています。それだけに今回の中川氏のセミナーも、wallstatによる多種多様なアニメーション映像がふんだんに盛り込まれたものとなりました。実際、会場の大型スクリーンには、「見える化」された耐震等級や制震性能、構造計画等々の衝撃的な映像が何度となく映し出され、満座の参加者に強烈なインパクトを与えたのです。

「耐震性能を明確に説明するよう求められる必要が、これからさらに高まっていくでしょう。すでにダウンロード数3万を超えたwallstatですが、無償で提供していく姿勢は今後も変わりません。この機会に、ぜひ皆さんも、実務への採用を検討されてはいかがでしょうか?」

リアルタイム投票システムによる質疑応答コーナー

満座の拍手を浴びながら中川氏が講演を終えると、直ちにリアルタイム投票システムで全国から寄せられた膨大な「質問」が集計されます。このシステムでは参加者は質問するだけでなく他人の質問に「いいね」することも可能で、その「いいね」が多かった質問から順に講演者が答えていきます。質問コーナーは各セミナーの終演後に行われましたが、どの回もこうしたセミナーでは珍しいほど多くの質問が届き、講演者の3氏も目を丸くするほどでした。

――こうしてたちまち時間は過ぎ、やがて司会者は閉会を宣言しました。閉会後も各講師の前には名刺交換を求める長い列ができ、顔見知りの参加者同士や福井コンピュータアーキーテクト社員も交えて、談笑の輪が幾つも広がっていました。

イベント参加者から一言

一建設株式会社 構造設計課次長 鈴木克実氏

最近、当社も耐震シミュレーションを始めたので勉強したくて参加しました。
中川先生の講演は初見のシミュレーション等とても参考になりましたし、阿部先生のお話も企業戦略面について大きなヒントをもらえました。また村上先生には当社の社内教育に協力を仰ぎたいと思っています。驚いたのはスマホの質問システム。質問しやすいし雰囲気も和んで良いですね!

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メイン会場の東京・渋谷ソラスタを中心に、北海道から九州まで全国29会場で同時開催した「A-Styleフォーラム東京」は、全国で約500名ものお客様をお迎えしました。次回はあなたのご来場をお待ちしています。

香川会場(1)

福岡会場

A-Styleフォーラム東京 スペシャルセミナー

テーマ
耐震性能は“差別化となるのか?”
開催日
2019年9月10日(火)
13時~17時15分
開催地
メイン会場:東京・渋谷ソラスタ
サテライト会場:全国28箇所

第1部 セミナー
 阿部建設株式会社
 代表取締役社長 阿部一雄氏

第2部 セミナー
 村上木構造デザイン室
 代表 村上淳史氏

第3部 セミナー
 京都大学
 生存圏研究所 生活圏構造機能分野
 准教授 中川貴文氏

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