BIMソフトによって設計のワークフローの革新を起こす
マサキ1級建築士事務所は、高松市に居を構え、正木孝英氏が代表を務める建築士事務所である。業務範囲は一般住宅から商業施設・生産施設、公共工事、店舗のリニューアルやマンションの大規模修繕へと多岐にわたっている。インテリアデザイナーの夫人との協働機会も多く、個人事務所としてのフットワークの良さを生かして、地域に根ざした建築士事務所として活動している。
BIMソフトで設計のワークフローを革新
福井コンピュータアーキテクト主宰の「マサキ1級建築士事務所におけるBIM」と題したセミナーから現況を報告する。
正木氏は地元ゼネコンで施工管理に従事した後、1992年に事務所を設立、同時に2次元汎用CAD を導入した。その後は多くの小規模組織に類して、JW_CADを中心に設計のデジタル化を進めてきた。
「業務量も順調に増え、大型物件の受注が続く中で、各種図面間の整合性をとるために時間がかかる2次元CADに限界を感じた」(正木氏)ことでBIMに関する情報収集を始めることとなる。その結果、2016年にBIMソフト「GLOOBE」を導入する。BIMソフトの習熟度が高まるに従い、援用範囲が設計実務全般へと拡がっていった。計画の初期には法的規制のチェックがBIMソフト内部で行える利便性に加えて、クライアントへのプレゼンテーションにも威力を発揮し、要望の具体的な確認時に実利を得ている。計画案の決定後には3次元建物モデルによるディテールの検討に効果があり、実施設計図レベルの図面作成、出力にも活用できるため、2次元CADは不要となった。
「2次元CAD からBIM ソフトへと移行する際のつまずきをいかにして解消するかが成功の秘訣だ」(正木氏)を紐解いてみる。BIMソフトを導入して、しばらくは3次元建物モデルから工程の進捗ごとに図面を作成し、2次元CADで加筆修正していたが、BIMソフトに習熟し、生成される図面の詳細度が上がるのに従い、変更・修正は全て3次元建物モデルで行い、建築確認申請の直前で設計図書一式として出力する手法へと移行していった。その結果、これこそが「BIMソフトによる設計のワークフローの革新だ」(正木氏)と認識するに至っていく。
【会誌「日事連」2020年11月号より転載】